手形の裏書譲渡とは?仕訳の方法やメリット・デメリットをご紹介!

資金繰りが苦しくなった時に、銀行などの金融機関からの融資が頭に浮かぶと思います。ただし、金融機関からの融資は、申込みから支払いまでに時間がかかりますし、ビジネスローンを利用すると金利が高くなります。

そんな時の1つの手段として使えるのが、手形の裏書譲渡。融資を利用しての資金調達ではなく、所有する約束手形(受取手形)を支払先へ「裏書譲渡」するという方法があるのです。

裏書譲渡することにより、資金調達をしなくても資金繰りを改善することができます。この記事では、裏書譲渡とは何か、メリット・デメリット、仕訳方法などを解説します。

約束手形とは?

約束手形とは、手形の振出人(債務者)が、決められた金額の支払を期日までに支払うことを約束する証書のこと。(「〇日までに〇円支払いますよ」という代金支払いの約束を証明するもの。)

手形の受取人(債権者)は、約束手形を銀行に持ち込んで、手数料を支払うことで手形を現金化できます。

手形の振出人が、期日までに支払いできないことを「不渡り」というのですが、実はこの「不渡り」を6ヶ月以内に2回起こした場合、銀行との取引が停止されます。これは、事実上の倒産を意味します。

約束手形は、もし支払いが滞った場合の制裁が厳しいため、他の契約方法と比較して振出人がきちんとお金を支払ってくれる可能性が高いのです。受取人としては、非常に安心できるシステムです。

ただし、約束手形の支払いサイト(取引代金の締め日から実際に支払いが行われるまでの期間)は3ヶ月〜6ヶ月に設定されることが多いので、振込での決済に比べると現金化が遅くなるというデメリットがあります。

約束手形の裏書譲渡とは?

約束手形は、「裏書譲渡」という方法を利用し、受取人は受け取った手形を別の支払いに使うことができます。

たとえば、振出人Aが振り出した約束手形300万円分を受取人Bが自らの取引先Cへの支払い300万円分に充てるために渡すことができるのです。

約束手形の裏書譲渡は、約束手形の裏側に連続して受取人が住所・氏名などを記載、印鑑を押印してから手形を譲渡したい人に渡すだけで完了です。

裏書譲渡をするメリットは?

それでは「裏書譲渡」を行うメリットについて紹介します。

手元資金がなくても、支払いができる

資金繰りが悪く手元資金に余裕がない場合でも、手形を裏書きして渡すだけで支払いに充てることができます。通常、手元資金がない場合は金融機関からの融資を受けるなどの対策をしなければいけませんが、そのような手間やコストを省くことができます。

裏書譲渡には、余計なコストがかからない

裏書譲渡を行う場合、約束手形を裏書譲渡をする側には一切費用はかかりません。もし資金繰りが悪くて銀行からの資金調達をする場合などには金利を支払う必要があるため、裏書譲渡はコストがかからないという点でメリットが大きいです。

裏書譲渡をするデメリットは?

では、裏書譲渡をするデメリットはあるのでしょうか?

現金化に手数料がかかるので、支払い相手に嫌がられる可能性がある

裏書譲渡して約束手形を受け取る側は、手形を現金化するために銀行に取立手数料を支払う必要があります。また、振出人の信用力が低い場合には、債務不履行の懸念があるため、手形を受け取ることが不安と感じる場合もあるでしょう。

手形が不渡りになった場合は遡及(そきゅう)される

約束手形は、振出人が債務不履行となり支払いできなくなった場合に、裏書した人を遡及(そきゅう)します。

たとえば、振出人Aが振出した約束手形を受取人B(第一裏書人)が裏書譲渡して取引先C(第二裏書人)へ渡したとします。取引先Cも支払いのために取引先D(所有者)へ裏書譲渡しました。

振出人Aが支払い期日に不渡りを起こし債務不履行となった場合には、振出人Aだけではなく、第一裏書人B・第二裏書人Cへ支払いを求めることができるのです。

このように、手形の裏書をすることで遡求権者に対しての支払い責任は合同責任となるのです。

後から金額の変更ができない

裏書譲渡をする場合、約束手形の額面の金額でしか譲渡はできません。そのため、額面より少ない金額を支払いたい場合には、裏書譲渡は利用できないのです。

裏書譲渡を行う際の3つの留意点

裏書譲渡をする際に気をつけるべきポイントは、以下の3つです。

  1. 裏書譲渡する順番が連続するように約束手形の裏側に署名・捺印をする(法的には住所の記載の必要はありませんが住所も記載するのが一般的です)
  2. 内容に不備がある場合は現金化されない(被裏書人の欄に裏書人の署名がはみ出てはいけない、押印が欠けていてはいけないなど)
  3. 銀行に取立に行く所有者も裏書をする(取立委任裏書)

裏書譲渡の仕訳方法

次に、裏書譲渡を行う際の仕訳方法を紹介します。

例として、振出人Aが振出した約束手形100万円を、裏書人Bが被裏書人Cへ渡したとしましょう。

まず、裏書人Bが振出人Aから手形を受け取った時点でのBの仕訳は以下のように仕訳します。

借方受取手形100万円
貸方売上100万円

裏書人Bが被裏書人Cへ裏書譲渡した時点のBの仕訳は以下の通りです。

借方買掛金100万円
貸方受取手形100万円

また、被裏書人Cの仕訳は通常の受取手形を受け取った時と同じく以下の通りに仕訳します。

借方受取手形100万円
貸方売上100万円

このようにして裏書譲渡の仕訳を行います。

でんさいによる譲渡・分割

手形取引は年々減少しており、2018年の手形交換高は261兆2,755億円(前年比30.1%減)で、1990年のピーク4,797兆2,906億円に比べ94.5%減と大幅に減少しています。

一方、2013年にスタートした全国銀行協会の「でんさい」は手形取引に代わる新しい決済方法で、まだシェアは少ないものの発生記録請求金額を年々伸ばしています。でんさいは電子債権記録機関の記録原簿への電子記録の発生、譲渡などを記録することができます。

でんさいによる譲渡は、約束手形の裏書譲渡とは異なり、金額を分割することができるというメリットがあります。それだけではなく、約束手形にはかかる印紙代がかからない、盗難リスクがないなどの点もメリットです。

参考:東京商工リサーチ

裏書譲渡以外の資金繰り対策について

裏書譲渡は所有する約束手形を譲渡することにより売掛債権と支払債務を相殺することができます。その結果、支払いに充てる現金を捻出する必要がなくなり、資金繰りを楽にすることができるのです。

約束手形の裏書譲渡以外にも、自らが所有する売掛債権を現金化して資金繰りに余裕を持たせるという方法もあります。

  1. 手形割引
  2. ファクタリング

資金繰りがかなり悪化しており、「手元に現金が欲しい」というケースにはこちらを利用した方が良いかもしれません。

手形割引とは

手形割引とは、手元にある期日前の受取手形を銀行に持ち込むことで、額面から手数料差し引いた金額を換金できる資金調達方法です。裏書譲渡とは異なり、実際に現金を手に入れることができるので、細かい支払などに使うことができます。

ただし、万が一振出人が債務不履行となり不渡りを出した場合には遡及して手形割引を依頼した受取人が銀行に対して弁済をする必要があります。

ファクタリングとは

ファクタリングとは、ファクタリング業者に手数料を支払うことにより売掛金や受取手形を買い取ってもらえるスキームです。手形割引が振出人が債務不履行となった場合には手形割引の依頼者が弁済する必要がありますが、ファクタリングの場合は弁済の必要がありません。

そのかわり、債務不履行になるリスクを加味して手数料を決めるので、売掛金や受取手形を発行する企業の信用力によっては手数料水準が高くなります。

まとめ

約束手形の裏書譲渡は、資金繰りが厳しい場合に自らが所有する受取手形を支払に利用することができる方法です。裏書譲渡を利用するには手数料などを支払う必要はなく、約束手形の裏側に連続して記名・捺印をして譲渡する人に渡すだけで手続きは完了します。

しかし、裏書譲渡で受け取る側は銀行への取立を依頼して手数料がかかるので手間もコストもかかるので受取を嫌がられる可能性もあります。そもそも手形取引は減少傾向にあるので、普段から手形決済をしていないならば尚更でしょう。

このように裏書譲渡にはメリット・デメリットがありますが、資金繰りが厳しい時に利用できる方法の一つとして覚えておきましょう。