ふるさと納税といえば、豪華な返礼品を納税した自治体の名産物をもらえるというイメージがあるかと思います。しかし、手続きが煩雑そうで「実はふるさと納税をしたことがない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ふるさと納税は自己負担を上回る返礼品を手に入れることができれば、普通に納税するよりお得になります。個人事業主がふるさと納税をする方法や上限額・控除額の算出方法、メリットについて紹介します。
そもそもふるさと納税とは
ふるさと納税とは、縁のある地や支援したい自治体へ寄付ができる制度です。寄付金の内、2,000円を超える部分については、税金の控除を受けることができます。
寄付をすると、寄付した土地の名産品などを返礼品として受け取れることに魅力を感じ、利用する人が増えているのです。
ふるさと納税をするの流れ
こふるさと納税は、「さとふる」「ふるさとチョイス」などのふるさと納税サイトや「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」などのECサイトから寄付先を選ぶことができます。一つの自治体でもさまざまな返礼品を用意していることもあるので、自分が返礼品で欲しいものを選びましょう。
また、ふるさと納税では寄付したお金の使い道を決めることもできます。たとえば、「子どもの教育のため」「福祉の充実のため」などがあるので、希望するものを選んでください。
その後、寄附をした自治体から返礼品と「寄附金受領証明書」が届きます。この証明書は確定申告の際に必要となるので、大切に保管しておきましょう。
ふるさと納税の控除額
所得税と住民税からの控除額は以下のように計算します。
①所得税からの控除
a.所得税からの控除 = (ふるさと納税の額ー2,000円)×「所得税の税率」
※控除の対象となるふるさと納税の額は、総所得金額等の40%が上限です。
②住民税からの控除
住民税からの控除は「基本分」と「特例分」を計算する必要があります。
b.住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税額-2,000円)×10%
※控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
c.住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税額ー2,000円)×(100%ー10%(基本分)ー所得税の税率)
※住民税の所得割額の2割を超えない場合になります。
上記の3つの控除を合計した額が、ふるさと納税に関する寄付金控除の控除額となるのです。
なお、所得税の税率は以下のように課税所得金額により変動します。
課税される所得金額 | 税率 | 免除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
参考:国税庁|所得税の税率
ふるさと納税の上限額の計算方法
ふるさと納税として寄付できる金額は、所得額により上限があります。個人事業主の場合、住民税決定通知書に記載されている住民税所得割額の約2割が限度額の目安です。
しかし、きちんと計算した方が「多く寄付しすぎてしまった」という状況を防ぐことができます。限度額を超えて寄附してしまった場合、通常の寄附として扱われ、税金の計算には影響しないのです。
より正確に上限を知りたいという場合は以下の計算式で算出できます。
寄付可能上限額 =( 住民税所得割額 × 課税所得に応じた変数 )+2,000円
住民税所得割額は以下のステップで確認します。
- 前年の「確定申告書控え」「住民税決定通知書」を用意
- 確定申告書控えを見て「課税所得金額」を確認
- 住民税決定通知書で「住民税所得割額」を確認
- 課税所得額と住民税所得割額を以下の表で計算
※住民税所得割額=都道府県民の税額控除前所得割額+市民税の税額控除前所得割額
<控除限度額計算式>
課税所得金額 | 計算式 |
195万円以下 | 所得割額×23.559%+2,000円 |
195万円超330万円以下 | 所得割額×25.066%+2,000円 |
330万円超695万円以下 | 所得割額×28.744%+2,000円 |
695万円超900万円以下 | 所得割額×30.068%+2,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 所得割額×35.520%+2,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 所得割額×40.683%+2,000円 |
4,000万円超 | 所得割額×45.398%+2,000円 |
ただし、個人事業主は毎年所得が変動する場合も多いですよね。この計算は前年度の所得実績で計算するので、急激な収入減になる可能性も考えてふるさと納税を利用した方が良いでしょう。
算出した上限額より少なめに寄付金を抑えたり、所得がおおよそ決まる12月にまとめて行ったりすると「寄付しすぎてしまった」という事態を防ぐことができます。
また、上記のようにふるさと納税の控除上限額を自分で計算するのは手間です。ふるさと納税サイト「さとふる」のホームページでは個人事業主用のふるさと納税控除上限額を算出できるシミュレーションもあります。
自身で計算をするのが面倒だという場合にはこちらを参考にしてみてはいかがでしょうか。
参考:さとふる|ふるさと納税控除上限額シミュレーションのご案内
個人事業主がふるさと納税を利用する方法
個人事業主がふるさと納税を利用するにはどのような手続きをすれば良いのでしょうか?
確定申告で申請
個人事業主は、確定申告でふるさと納税の寄付額を申請することにより、税金が控除されます。具体的には、所得税の場合ふるさと納税を行った年の所得税から控除されます。住民税はふるさと納税を行った年の翌年度の住民税から控除されるので、控除される年が異なることを覚えておきましょう。
確定申告に記載する場合は、確定申告書B・第一表の16「寄付金控除」のところに寄付額を記載し、確定申告書B・第二表には寄付先の所在地などを記載します。
この寄付額は単純に2,000円を差し引いた額ではなく、以下の2つのうち小さい方を適用します。
- 総所得金額の合計 × 40%−2,000円
- 寄附金合計 – 2,000円
所得がかなり多い場合を除いては、寄付金合計から2,000円を引いた額になりますが、念のために確認するようにしてください。
確定申告には、「寄附金受領証明書」を寄付した証明として添付して申請します。
ワンストップ特例制度は利用できない
会社員で年収2,000万円以上を超えない・寄付する自治体が5箇所以内などの条件を満たしている人は、確定申告に比べると手続きが簡易な「ワンストップ特例制度」が利用できます。
ふるさと納税時にワンストップ特例制度を利用すると申請すると、寄付した自治体からワンストップ特例制度の申請用紙が送られてくるので、それに必要事項を記載して自治体へ返送するだけで手続きが完了します。
しかし、個人事業主の場合はこのワンストップ特例制度は利用できません。必ず確定申告をする必要があるので、申請方法を間違えないようにしましょう。
個人事業主がふるさと納税をするメリット
個人事業主がふるさと納税をするメリットとはどんなところにあるのでしょうか?
自己負担2,000円で各地の名産品が受け取れてお得
ふるさと納税のメリットは、通常納税するだけでは受け取ることができない返礼品を受け取れるところにあります。自己負担2,000円の負担は必要になりますが、返礼品の金額が2,000円相当を超える場合はお得といえるでしょう。
いくつかの自治体へ寄付したとしても、自己負担は2,000円なので、控除額上限の範囲内でなるべくたくさん寄付した方がお得です。返礼品は米・肉・魚介類・フルーツ・お酒などさまざまな種類があり、ニーズに一致するものは必ずあるかと思います。
また、「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などで普段から買い物をしてポイントを貯めている方も多いかと思います。ふるさと納税でこれらのサイトを利用する場合でも、通常の買い物と同様にポイントがつくので更にお得感があります。
もともと確定申告をしているので手間がかからない
上記でも説明しましたが、個人事業主がふるさと納税を利用する場合は確定申告が必要となります。しかし、個人事業主は通常確定申告をしているため、確定申告に対するハードルは低いのではないでしょうか。
普段の手続きに、寄付控除の欄に記載して、「寄附金受領証明書」を添付するだけなので、手間はかかりません。
まとめ
ふるさと納税は2,000円の自己負担を支払うことにより、寄付した額を所得税・住民税から控除できます。
ふるさと納税で寄付することにより、寄付した自治体から返礼品を受け取ることができますが、この返礼品の額が2,000円相当を越えれば通常通り納税するより得をするしくみです。ただし、所得によってふるさと納税できる額の上限があるので、事前に確認するようにしてください。
また、個人事業主がふるさと納税をする場合、確定申告をする必要があります。ただし、個人事業主は普段から確定申告をしているのでそこまで手間に感じないでしょう。
確定申告上に「総所得金額の合計 × 40%−2,000円」または「寄付額から2,000円を差し引いた額」の小さい方を記載します。また、自治体から送られてくる「寄附金受領証明書」を添付することを忘れないようにしましょう。