海外の企業と取引をしている場合、輸出先の企業が信用できるのか?きちんと代金を支払ってくれるのかを調べるのは困難です。
せっかく海外の業者と取引をしたのに、代金を支払ってもらえない場合に回収できないかもしれません。
実は「国際ファクタリング」であれば、取引先が海外の業者であっても確実に売掛債権の回収ができます。
この記事では、これから海外の企業に対して輸出を行う企業に向けて、
- 国際ファクタリングの概要や仕組み
- 国際ファクタリングの利用手順
- 国際ファクタリングのメリットやデメリット
などについて解説します。
この記事を読むことで、海外の企業と取引をする場合でも安心して取引ができるようになるので、ぜひ読んでみてください。
国際ファクタリングの概要や仕組みとは?
国際ファクタリングとは、商品などを海外の企業に輸出する企業が、海外の企業からの代金を確実に回収するために行う「ファクタリング」のことです。
4社間で行われるファクタリング
通常のファクタリングは2社あるいは3社で行うのが一般的ですが、国際ファクタリングの場合は、以下のように4社間で行なうことが多いです。
- 輸出業者(商品を輸出する)
- 輸入業者(商品を輸入し、支払いをする業者)
- 国内のファクタリング業者
- 海外のファクタリング業者
日本国内の輸出業者が海外の輸入業者と取引をする場合、海外の輸入業者は支払いを行います。
国際ファクタリングでは、この際に発生する売掛金を国内ファクタリング業者が買い取るのです。
海外の業者と取引する場合、その業者が代金をきちんと支払ってくれる企業なのかは、わかりません。
自社で調査しようにも、多額の費用と手間がかかります。
そこで、国際ファクタリングを利用すれば、輸入先の企業の調査は国内ファクタリング業者がやってくれるので、費用や手間を抑えながら代金の回収が可能になるのです。
信用状との違いを解説
国内の輸出業者が海外の輸入業者と取引する際には「信用状(L/C)」と呼ばれる制度を利用する方法もあります。
信用状とは、銀行が輸入業者の代わりに代金の支払いを保証することで、輸入業者・輸出業者の双方のリスクを回避できます。
輸入業者のリスク | 商品をきちんと入手できないこと(商品回収リスク) |
輸出業者のリスク | 商品を送ったのに、代金を支払ってもらえない (代金回収リスク) |
信用状はこのように便利な方法なのですが、以下のようなデメリットがあります。
輸入業者のデメリット | ・銀行に支払う手数料がかかる ・貿易書類が銀行から届くので商品の受け取りに 時間がかかる(数日〜1週間程度の遅れ) ・信用状についての知識が必要信用が低いと 銀行から担保を要求される |
輸出業者のデメリット | ・銀行に支払う手数料がかかる ・信用状を発行しようとしても 買取拒否をされることがある ・信用状についての知識が必要 |
そのため、信用状の手続きをするのは、手間や費用がかかるため、輸入業者から信用状の手続きを断られることもあります。
一方で、国際ファクタリングは、あくまでも売掛債権の回収になります。
信用状と比べて、手間がかからず、取引の遅延が起きにくいため、スムーズに代金回収を行えるのです。
国際ファクタリングを利用する流れ
ここからは、国際ファクタリングを利用する流れについて解説します。国際ファクタリングを利用する場合の流れについては以下のとおりです。
- 輸入企業と輸出企業が売買
- 輸入企業に対して国際ファクタリングの利用の通知を行う
- 国内のファクタリング業者に引受依頼
- 国内のファクタリング業者が提携している海外のファクタリング業者に引き受け依頼
- 信用調査を行い、結果が輸出業者に通知される
- 国内ファクタリング業者が利用者に依頼受領通知を送信
- 輸出企業と輸入企業が取引を行う
- 船積完了後にインボイスとB/Lを国内ファクタリング業者に提出して申し込み
- 海外ファクタリング業者が輸入企業から売掛債権を回収
- 海外ファクタリング業者が国内ファクタリング業者に代金を支払い
- 国内のファクタリング業者から輸出企業へ支払い
まず、ファクタリングを利用する場合、輸入企業に対してファクタリングを利用する旨を伝えます。
その後、国内にあるファクタリング業者に引き受けの依頼を行います。業者は、提携している海外のファクタリング業者に対して引受の依頼を行うのです。
ファクタリング業者は、輸入企業が、きちんと代金を支払うだけの能力があるのか、会社としての存続性があるのかなど信用調査を行ってくれます。
国内ファクタリング業者からの依頼受領通知が来たら、輸出企業は輸入企業との取引を開始します。
なお、売掛債権である商品の代金は、海外のファクタリング業者が回収をして、国内ファクタリング業者に支払う流れです。
そして、最後に国内ファクタリング業者が輸出企業に代金を支払って取引が完了します。
なお、信用調査にかかる期間は、三菱UFJファクターの場合3週間かかります。また、回収期間は一般的にはどの業者も120日以内、最長でも180日以内に行います。
国際ファクタリングの利用が想定される3つのケースとは?
国際ファクタリングを利用する場合、どのようなケースで利用されることが多いのか解説します。
国際ファクタリングを利用するケースの代表例は以下の3つです。
- 取引をする輸入企業が信用状(L/C)に応じないケース
- 売掛債権の額が大きく、リスクが高いケース
- 輸入企業の信用調査をファクタリング業者にして欲しいケース
1.取引をする輸入企業が信用状(L/C)に応じないケース
海外の会社のなかには、書類作成に手間がかかる点や手数料が発生するという理由で、信用状の利用をためらう会社も存在します。
また、信用状を利用するためには、銀行の審査に通らなければ発行ができません。
以上の理由から、信用状の利用が難しい場合、銀行の審査が厳しくない国際ファクタリングを利用するケースがあるのです。
2.売掛債権の額が大きく、リスクが高いケース
海外の企業と貿易をする際に金額が大きくなると、代金回収ができない場合のリスクは大きくなります。
そのため、金額が大きい取引では、代金回収に失敗することは避けなければなりません。
国際ファクタリングは、ファクタリング業者が支払いを100%保証してくれるので、安心して海外の業者と取引ができます。
3.輸入企業の信用調査をファクタリング業者にして欲しいケース
輸入企業の調査には、時間・手間・費用がかかります。
輸出企業が大手企業であれば、現地に法人子会社を持っているケースもあるため、信用調査をすることも可能です。
しかし、現地に法人子会社を持てないような中小企業の場合、信用調査を行うことは難しいでしょう。
そこで、国際ファクタリングを利用すれば、国内ファクタリング業者と提携している海外のファクタリング業者が信用調査を行ってくれます。
そのため、輸入先企業の信用情報を手に入れることができ、安心して取引ができるのです。
国際ファクタリングのメリット
国際ファクタリングのメリットについて解説します。国際ファクタリングを利用するメリットは以下の3つです。
- 輸出企業から確実に代金の回収が可能
- 信用状の発行をする必要がない
- 書類送付による遅延が発生しない
順番に解説します。
1.輸出企業から確実に代金の回収が可能
国際ファクタリングを利用すれば、輸出企業から確実に代金の回収が可能です。
なぜなら、海外の業者が売掛金の支払いができなくなった場合、ファクタリング業者では延滞から90日経過したタイミングで保証履行ができるから。
このように、国際ファクタリングなら、代金を回収できなくなるリスクを避けられるのです。
2.信用状の発行をする必要がない
海外の企業と取引する際は、直接契約では代金を回収できないリスクが高いので、信用状を発行してもらうケースがあります。
ただ、信用状の発行をするためには、輸入企業が銀行の審査に通る必要があります。
もし、輸入企業に代金を支払う能力があっても、銀行の審査に通らなければ、信用状が発行できません。
一方、国際ファクタリングも輸入企業の審査はあるものの、銀行の審査と比べると通りやすいため、多くの企業が利用できるのです。
3.書類送付による遅延が発生しない
信用状を利用した場合、船積み書類(B/L)を銀行経由で送るため、書類の到着が遅くなります。
急いで代金を回収したい輸出企業の立場から考えると、代金回収が遅くなることは良いことではありません。
一方、ファクタリング業者を利用した場合は、輸出企業から輸入企業に直接書類を送ることができるため、信用状よりも早く手続きができるのです。
国際ファクタリングのデメリット
国際ファクタリングは信用状よりも代金回収のリスクが低く、便利な方法ですが、デメリットもあります。
- ファクタリング手数料が高い
- 取り扱っているファクタリング業者が少ない
順番に解説します。
1.ファクタリング手数料が高い
ファクタリングの手数料は信用状の手数料よりも高いです。国際ファクタリングの場合以下の手数料がかかります。
- 信用調査費として1万円前後
- 保証料としてインボイス金額1ヶ月あたり0.7%〜2%orフラットレート(個別交渉)が適用
- その他の費用(通信費など)
信用状も電信料が1万円と為替手数料がかかりますが、保証料率が年間で0.5%〜1.0%と低いため、ファクタリングの方が手数料は高く付きます。
2.取り扱っているファクタリング業者が少ない
国際ファクタリングは取り扱っている銀行がとても少ないです。
- 三井住友銀行
- グローバルファクタリング株式会社
- 三菱UFJファクター株式会社
- みずほファクター
国内ファクタリングに参加できる銀行は、Factors Chain International(FCI)と呼ばれるネットワークに参加できる銀行のみ。
そのため、日本で国際ファクタリングを取り扱っているのは、みずほ銀行や三菱UFJ銀行など大手銀行の子会社ぐらいです。
国際ファクタリングに対応しているファクタリング会社
国際ファクタリングに対応しているファクタリング会社をいくつか紹介します。国際ファクタリングを利用する場合、以下の3社では取り扱いがあります。
- 三井住友銀行
- 三菱UFJファクター株式会社
- みずほファクター
三井住友銀行
三井住友銀行商品「国際ファクタリング」は、三井住友銀行がリスクヘッジを提供する商品。
国際ファクタリングのネットワークであるFCI加盟のファクタリング業者と提携しています。
そのため、三井住友銀行との取引がない海外の企業に対してもファクタリングの対象になります。
三菱UFJファクター株式会社
三菱UFJファクターは、三菱UFJ系のファクタング業者です。FCIのネットワークを活かして、ファクタリングを利用できます。
実際に、海外企業からの代金回収に不安がある場合や大口案件の受注のためにファクタリングを利用されています。なお信用調査には約3週間かかります。
みずほファクター
みずほファクターはみずほ銀行系のファクタリング会社です。
FCIのネットワークを活かし、世界各国のファクターと提携しているため、多くの国との取引にファクタリングを利用できます。
アメリカやカナダはもちろん、ブラジル・ヨーロッパ・トルコ・南アフリカの企業との取引に利用できるので、カバーされている範囲が広いです。
参考:三菱UFJファクター株式会社/みずほファクター/三井住友銀行国際ファクタリング
まとめ
本記事では国際ファクタリングについて解説しました。
ポイントは、
- 国際ファクタリングは信用状よりも手間や時間がかからない
- 国際ファクタリングを利用すれば、代金の回収がほぼ100%可能
- 国際ファクタリングの手数料は信用状よりも高め
- 国際ファクタリングを利用できるのは大手銀行などに限られる
国際ファクタリングは、海外の企業と取引を行う会社にとって、代金未回収のリスクを減らせるのです。