調剤報酬ファクタリングで資金調達する仕組みとは?メリット・注意点も解説

「経営する薬局の近くに新しい病院ができ、新しい薬を仕入れれば取引につながりそう」「今注目の新薬を仕入れたら売上アップが見込める」、薬局を経営していると、このようなビジネスチャンスが発生することがあります。しかし、チャンスをものにするには、まとまった資金が必要です。

銀行の融資では、時間がかかりすぎて間に合わない・・・そんなときに覚えておきたい資金調達方法が「調剤報酬ファクタリング」です。

調剤薬局の資金調達方法「調剤報酬ファクタリング」ってなに?

「調剤報酬ファクタリング」とは、調剤薬局がもっている調剤報酬債権を使った資金調達方法です。

そもそも、調剤報酬とはどのような仕組みになっているのでしょうか。調剤薬局が受け取る報酬は、窓口で受け取る調剤報酬と、あとから振り込まれる調剤報酬の2つに分かれています。

たとえばあなたが病院にいき、薬局で処方箋を受け取るときに健康保険証を見せれば、窓口での支払いは3割負担ですみますよね。それが窓口分の調剤報酬です。

のこり7割の調剤報酬は、調剤薬局がその月にサービスを提供した報酬を翌月10日までに、社保(社会保険調剤報酬基金)や国保(国民健康保険団体連合会)へ調剤報酬の明細書(レセプト)を提出します。レセプトを提出してから約2ヶ月後に、調剤報酬が振り込まれる仕組みで、入金までに非常に時間がかかるのが特徴です。

一方、調剤報酬ファクタリングを使えば、契約してから約5営業日ほどで資金が手に入ります。

調剤報酬ファクタリングの仕組みと流れ

では調剤報酬ファクタリングの仕組みは、どのようになっているのでしょうか。まず、調剤報酬ファクタリングは3社間の調剤報酬債権のやりとりです。

「調剤薬局」がレセプトを「社保・国保」へ提出し、「調剤報酬ファクタリング事業者」へもサービスの申し込みと審査の依頼をします。審査を通過したら、ファクタリング事業者から調剤薬局へ約5営業日ほどで、調剤報酬の約80%が入金されます。

その後、期日がきたら社保・国保からファクタリング事業者へ全額振り込みがあり、ファクタリング事業者から調剤薬局へ、のこり20%分の調剤報酬から手数料が引かれた額が振り込まれるという仕組みと流れになっています。

調剤報酬ファクタリングのメリット5つ

では調剤報酬ファクタリングのメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。ここからは、必ず知っておきたいメリット5つをお伝えします。

1.財務状況を改善できる

調剤報酬ファクタリングは売掛金の売却であり、借金ではありません。決算書上でも借入金として扱われないため、金融機関へ新たに融資を申し込む際にマイナス評価にならないのです。

また手許に現金が増えることで、資金繰りがスムーズになるというメリットも発生します。このように、ファクタリングを利用することで財務状況が改善できるのです。

2.融資に比べて審査がとおりやすい

融資を申し込む場合、事業契約書や資金の使用用途、決算書などを金融機関に提出し、審査を待つ必要があります。せっかく苦労して書類を作っても、審査でとおらないことも。

一方、ファクタリングの審査では、ファクタリング利用事業者ではなく、債権発行者の信用度を重視します。なぜなら、債権発行者が債権未払いを起こしたり、最悪の場合倒産してしまうと債権の回収ができないからです。調剤報酬債権の請求先は国保・社保といった公的機関なので、このようなリスクが非常に低いと考えられます。そのため調剤報酬ファクタリングは融資に比べて、審査が通りやすいのです。

3.カードローンなどに比べて手数料が安い

調剤報酬ファクタリングの手数料は0.25%〜1%のため、一般的なカードローンよりも手数料が非常に安く設定されています。その理由は、前述のとおり「調剤報酬債権が回収不能になるリスクが極めて低いから」。公的機関の信用度が高いゆえ、調剤報酬ファクタリングの手数料も安く押さえられるのです。

4.連帯保証人や担保がほぼ不要

金融機関などからの融資の場合、連帯保証人や担保が必要です。一方、調剤報酬ファクタリングは借入ではないため、連帯保証人も担保もほとんど必要ありません。

しかし、調剤報酬ファクタリングの中には、調剤薬局の経営状況によって連帯保証人が必要なものも存在します。どのような条件なら、連帯保証人が必要なのか事前にしっかり確認するようにしましょう。

5.借入ではないので銀行などの信用情報に影響がない

繰り返しになりますが、調剤報酬ファクタリングは借入ではないため、決算書に負債として計上されません。そのため、新たに融資を申し込むときに行なわれる金融機関の信用調査で、マイナス評価されることがないのです。

調剤報酬ファクタリングで気をつけるべき3つのポイント

実際に調剤報酬ファクタリングを利用するときには、どのようなポイントに気をつけなければいけないのでしょうか。ここからは3つのポイントについて、くわしくお伝えします。

1.審査にとおらないこともある

調剤報酬ファクタリングは高確率で審査がとおります。しかし、社会保険料などの税金を滞納していると審査に落ちることも。社会保険料の場合は「1回だけ滞納してしまった」といった場合はそれほど深刻に捉える必要はありませんが、継続して滞納していたり悪質な場合はファクタリングを利用することはできません。

なぜなら、調剤報酬は税金の差し押さえ対象になるから。調剤報酬が差し押さえられると、ファクタリング事業者は報酬の回収ができません。そのため、税金を滞納している場合はファクタリングの審査に落ちてしまうのです。

2.はじめて利用する場合、入金までに時間がかかる

通常、調剤報酬ファクタリングでは約5営業日ほどで入金されますが、初回に限り2週間程度時間がかかります。

なぜなら、調剤報酬ファクタリングに申し込んだ調剤薬局が「社保・国保の適用事業者であるか」といった審査が必要になるからです。

ファクタリングはすぐに入金されるイメージがありますが、はじめて取引をするファクタリング業者に依頼する場合には「通常よりも時間がかかる」ということを覚えておきましょう。

3.手数料がかかる

ファクタリングを利用すると、必ず手数料がかかります。調剤報酬ファクタリングの手数料は最大でも1%と、とても低いことは間違いありません。しかし、満額受け取れるはずだった調剤報酬が、手数料分減ってしまうのは事実です。

急な資金調達ではとても有効な調剤報酬ファクタリングですが、繰り返し利用することで手数料分報酬が減っていくことを忘れないようにしましょう。

調剤報酬ファクタリングを利用する4つの手順

ここからは、調剤報酬ファクタリングを利用するときの手順についてお伝えします。

調剤報酬ファクタリング業者へ相談をする

まず、インターネットや調剤薬局経営者などのつながりから、調剤報酬ファクタリング事業者の情報を集めましょう。銀行が運営するファクタリングや、医療事業者に特化したファクタリングなどさまざまな業者が存在します。

いくつか比較し、手数料・入金までのスピードなど条件があうファクタリング事業者に相談しましょう。

調剤報酬債権の審査を受ける

次に、調剤報酬債権の審査を受けます。審査に必要な書類はおおむね以下のとおりです。

  • 登記簿謄本
  • 印鑑証明書
  • 預金通帳のコピー(口座名義人ページ、国保・社保の入金ページ)
  • 国保・社保の決定通知書

ファクタリング事業者と契約し、調剤報酬債権の譲渡を行なう


審査に問題がなければ、ファクタリング事業者と契約を交わします。また、同時進行で国保・社保に対する債権譲渡通知を行なう必要があります。

ファクタリング業者から入金される


契約が無事完了したタイミングで、ファクタリング業者から入金があります。事前に把握していた額と差異がないか、きちんと確認しましょう。

調剤報酬ファクタリングサービスが利用できる業者3つ

調剤報酬ファクタリングサービスを提供している業者は、実はそれほど多くありません。ここからは、調剤報酬ファクタリングの中でも有名な3社をご紹介します。

NS PARTNERS(エヌエスパートナーズ株式会社)

医療機関・介護事業者・調剤薬局・歯科医院向けにファクタリングサービスを提供しているNS PARTNERS。

ファクタリング手数料は0.25%〜1%で、買取金額の上限は設けられていません。保証人については、調剤薬局事業者の運営状況により必要となる場合があります。事前ヒアリングがあるので、そのときに確認するようにしましょう。

参照:NS PARTNERS

カイポケ(株式会社エス・エム・エス)

カイポケは、介護事業者のサポートサービスを幅広く提供している株式会社エス・エム・エスが運営しています。東証一部上場企業のため、コンプライアンス面でも安心して利用することができます。

ファクタリング手数料は0.8%ととても低く設定されていて、契約から約5営業日後には入金が可能です。保証人などは必要ないので、スムーズに契約することができるでしょう。

参照:カイポケ

スルガ銀行

銀行系の調剤報酬ファクタリングでは、スルガ銀行があります。「介護・診療・調剤報酬債権ファクタリング」という名称でサービスが提供されています。

調剤報酬債権の振り込みよりも45日早く現金を受け取れるという点がアピールポイントですが、他のファクタリングサービスと比較してもそれほど早いとわけではありません。しかし、銀行系のファクタリングなので、信用度が高い点、銀行との取引実績が蓄積されていく点がメリットです。

手数料などの詳細は個別相談になるため、気になる方は問い合わせてみてくださいね。

参照:スルガ銀行

まとめ:賢く調剤報酬ファクタリングを利用して経営にいかそう

調剤報酬ファクタリングは、他の資金調達方法よりも手数料が低いため、計画的に使えばとても便利な仕組みです。利用方法も簡単なので、知っておいて損はないでしょう。

しかし手軽に使えるため、頻繁に利用しすぎて気がついたら年間でかなりの手数料を支払っていた・・・なんてことにもなりかねません。手数料は低くても、チリも積もれば山となります。

メリット・デメリットを理解し、賢く利用することで調剤薬局の経営がよりよい方向へ発展していくでしょう。ここぞというときに資金調達の一手として、調剤報酬ファクタリングを利用してみてはいかがでしょうか。