個人事業主なら知っておきたい経費にできるものとできないもの

個人事業主になって、最初にぶつかる壁が「経費」の問題。「なにが経費にできで、なにが経費にできないのか」が分からず、悩んでいる人は少なくないでしょう。

はっきり言うと「経費にできるものとできないもの」を見分けるためには、その「判断基準」を知っておく必要があります。これさえ知っていれば、誰でも「経費にできるものとできないもの」を見分けることができるようになります。

本記事では、経費にできるものとできないものを見分ける「判断基準」や、経費に関する「よくある疑問」に対する答えを、できるだけわかりやすくご紹介します。

経費にできるか、できないかの2つの判断基準

支払うべき税金の額は、「(事業の売上ー経費)×税率」で決まります。
そのため、経費として計上するものが多ければ多いほど、税金を少なくすることができます。しかし、ここで注意しておきたいのが「すべての費用が経費として認められるわけではない」ということ。

結論からいうと、経費にできるかできないかの判断基準は「仕事(=事業の売上)に関係する費用かどうか」「その正当性を説明できるかどうか」の2つです。

1.仕事(=事業の売上)に関係する費用かどうか

仕事に関係ない費用は、経費として計上することはできません。たとえば、仕事に関係のない友人との食事代、プライベートで着るために買った服代など、当然のことながら、これらの費用は「経費」として認められることはありません。なぜなら、仕事に関係のない費用だからです。

2.経費としての正当性を説明できるかどうか

もう1つの判断基準は、「経費としての正当性を説明できるかどうか」です。経費の額があまりにも多い場合、税務調査が入ることがあります。この際、調査員に「経費として計上した理由」をきちんと説明できないと、最悪の場合「脱税」と判断されてしまう可能性があります。(事業をしている方であれば、5年に1度は税務調査が入ります)

万が一のことを考えて、普段から「経費としての正当性を説明できるかどうか」という視点で、費用を計算すると良いでしょう。

経費にできるもの、できないもの一覧

経費にできるものとできないものの一覧表を載せています。詳細は、一覧表のあとに記載しています。まずはサクッと、表を確認してみてください。

経費にできるもの、できないもの一覧表(主なもの)


経費にできるもの経費にできないもの
税金・個人事業税
・固定資産税
・自動車税
・登録免許税
など 
・事業主自身の
住民税
・事業主自身の
所得税
・事業主自身の
保険料
生活費・水道代・電気代
・ガス代・通信費
など
・仕事に関係ない
生活費
仕事の備品・ボールペン
・コピー用紙
・電球  など
・仕事に関係ない
備品
交通費など・公共交通機関の
交通費
・宿泊代 など
・仕事に関係ない
交通費

経費にできるもの

「経費にできるもの」について詳しくみていきましょう。

税金の一部

個人事業税・固定資産税・自動車税・印紙税などは、経費に計上することができます。その他、税金ではありませんが、商工会議所・同業者組合などの会費や組合費も同様に経費に計上できます。

生活費

水道代・電気代・ガス代などの光熱費やインターネット・携帯電話などの通信費も経費として計上することができます。仕事とプライベートの両方で使用している場合は「家事按分」により、仕事で利用している「割合」を算出し、その分だけを経費として計上することができます。(家事按分については後ほどご説明します)

備品類

仕事で必要なボールペンやコピー用紙、電球などの消耗品も経費として計上することができます。

旅費交通費

取引先へ出向いたり、営業活動などで利用した交通費は経費として計上することができます。主な交通機関はタクシー・バス・電車・飛行機が該当します。宿泊費も同様です。

意外と知らない経費にできるもの

実は「えっ!こんなものも経費で落とせるの?」といった、意外と知られていない費用があります。ふだん、見落としがちな費用をまとめてみました。

自動販売機のジュース代

自動販売機では領収書もレシートも発行することができません。しかし、自動販売機の場合には「出金伝票」を活用することで経費に計上することができます。

出金伝票とは簡単に言えば「自分で領収書を作れる」伝票のこと。出金伝票に日付、金額、品目、支払い先を記入することで、領収書の代わりとして利用できます。(自動販売機の場合は、支払先を「自動販売機」と記入)

また、領収書を紛失したときも、出金伝票を作成することで領収書の代わりとして利用できます。しかし、本来なら領収書やレシートで対応できるものを、むやみやたらと出金伝票にしていると税務署から「減税のために虚偽の申請をしているのでは?」と怪しまれる可能性があります。基本的には、領収書やレシートで対応するようにしましょう。

事業で使用したことが証明しづらい経費があれば、証明書や証拠となる資料を残しておくことも大切です。

高速道路のETC利用料金

高速道路のETCの利用料金は、「利用証明書」が領収書の代わりとなります。利用証明書は3つの方法から発行することが可能です。

1.係員に依頼

高速道路に入るときはETCレーンから、出るときは一般レーンを利用し、係員に「利用証明書が欲しい」と伝える。清算はETCカードで清算できます

2.ETC利用履歴発行プリンタを利用する

一部のサービスエリアやパーキングエリアに、ETC利用履歴を発行するプリンタが設置されています。過去の使用履歴を無料で印刷でき、領収書として代用できます

3.ETC利用照会サービスを利用する

オンライン上で利用できるサービスです。走行明細を確認できますので印刷すれば領収書の代わりになります。利用登録していれば過去15か月間、登録が無い場合は62日前まで過去の履歴を確認することが可能です

ETC利用照会サービス

経費にできないものの詳細

次は、経費にできないものについてみていきましょう。

一部の税金

事業主自身の「住民税」「所得税」「相続税」はプライベートなものとして区分けされるため、経費として認められません。また、「罰金」や「延滞税」はペナルティの意味合いもあるため、経費として認められません。

事業主の保険

事業主自身の「国民年金」「国民健康保険」もプライベートに区分けされるため、経費として計上できません。

仕事に関係のない備品・生活費

仕事に関係のないものは、基本的には経費として計上することができません。たとえば、プライベートで使用した水光熱費、通信費、ボールペンなどの備品、プライベートの買い物や旅行で利用した交通費や宿泊代などは経費として計上することはできません。

意外と知らない経費として認められないもの

仕事に関係している費用の中には、「これ、経費で落ちないの?」という費用があります。よくある間違いなので、しっかりとおさえて欲しいポイントです。

美容院代・化粧代

美容院代や化粧代は、仕事に関係なくするものとして区分けされているので、経費として認められません。ただし、テレビ出演や雑誌取材などで「普段以上の身だしなみが必要」という場合に限り「広告宣伝費」として経費に計上することが可能です。

スポーツクラブ・スポーツジム

仕事のための基礎体力づくりや体調管理のためにスポーツクラブを利用する方もいるでしょう。しかし、個人事業主自身がスポーツクラブを利用する場合、それはプライベートの利用として判断されるため、経費として認められません。

健康診断費(人間ドッグを含む)や生命保険料

こちらも、スポーツクラブと同じ理由です。個人事業主の場合は、プライベートの費用として判断されるため、経費として認められません。ただし、生命保険料に限り、確定申告の所得控除欄に支払った生命保険料を記入することで税金を減税することができます。

経費にできるかできないか、迷いがちなベスト3

経費に関して、個人事業主がよく迷いがちなベスト3をご紹介します。

1.缶コーヒーやカフェの代金

たとえ仕事中だとしても、個人事業主自身(1人)で利用したカフェ代やコーヒー代などは経費にすることができません。従業員やお客様との打ち合わせなどで利用した場合は経費にできます。

利用者缶コーヒーやカフェ代金
個人事業主のみ経費にできない
従業員+個人事業主経費にできる
クライアント+個人事業主経費にできる

※自動販売機は領収書がでないので、前述した通り出金伝票を利用します。

2.飲食店や居酒屋を利用した代金

飲食店や居酒屋を利用した代金に関しても、缶コーヒーやカフェの代金と同じ。個人事業主1人で利用した場合は経費にできません。従業員や取引先、お客様と仕事の話を目的とした飲食代は経費にできます。

利用者飲食店や居酒屋の代金
個人事業主経費にできない
従業員+個人事業主経費にできる
取引先やお客様+個人事業主経費にできる

3.スーツや靴、バッグなど衣服の代金

一般的にはスーツやバッグなどの衣服は、プライベートでも利用できると判断されるため、経費にできません。しかし、作業着や制服といった形で仕事でしか着ていないことを説明できれば、経費にできます。

また、テレビ出演や雑誌取材などでスーツの購入が必要な場合には「広告宣伝費」として計上することが可能な場合があります。出演したテレビ番組の録画や出演雑誌を証拠資料として残しておくと、より経費にできる可能性が上がります。

用途スーツやバックの購入代金
仕事

プライベート
経費にできない
仕事制服であることを証明できれば
経費にできる
テレビ・雑誌取材など
特別な場合
広告宣伝費として認められる
場合がある

仕事・プライベート両方で使うものは「家事按分」

個人事業主の方は、仕事場が自宅という人も多いと思います。また、携帯電話に関しても、仕事とプライベートを分けずに使っている人がほとんどではないでしょうか。

実は、仕事とプライベートの両方で使っているものは、一部を経費として精算することができます。これを「家事按分」といいます。

家事按分は、全体の利用料から仕事で使用した割合を算出します。法律で決められた計算方法はないので、割合、業務時間、日数換算などを使って計算します。よく使われる計算方法を記載しておきますので、参考にしてみてください。

家事按分①:面積で計算

家賃を家事按分する際によく使われる方法です。

面積で家事按分する場合の「計算式」

  1. 「仕事で使っている面積」/「全体の間取り」=「仕事で使っている割合(%)」
  2. 「家賃」×「仕事で使っている割合(%)」=家事按分で計上可能な金額

面積で家事按分する場合の「計算例」

例)家賃10万円、間取り2LDK(70㎡)、仕事場1部屋(10㎡)の場合

  1. 10(㎡)/70(㎡)=0.1428 ≒14(%)
  2. 100,000(円)×14(%)=14,000(円)

家事按分②:コンセントの差し込み口やコンロの数で計算

電気代やガス・水道代を家事按分する際によく使われる方法です。

コンセントの差し込み口やコンロの数で家事按分する場合の「計算式」

  1. 「仕事で使っている数」/「全体の数」=「仕事で使っている割合(%)」
  2. 「月の料金」×「仕事で使っている割合(%)」=家事按分で計上可能な金額

コンセントの差し込み口で家事按分する場合の「計算例」

例)自宅全ての差込口15個 そのうち5個が仕事用 月の電気代が10,000円の場合

  1. 5(個)/15(個)=0.3333 ≒33(%)
  2. 10,000(円)×33(%)=3,300(円)

家事按分③:使用日数で計算

通信費を家事按分する際によく使われる方法です。

面積で家事按分する場合の「計算式」

  1. 「仕事で使っている時間」/「月の日数」=「仕事で使っている割合(%)」
  2. 「月の料金」×「仕事で使っている割合(%)」=家事按分で計上可能な金額

業務時間で家事按分する場合の「計算例」

例)業務使用日数20日(1カ月を30日として計算)通信費20,000円とした場合

  1. 20(日)/30(日)=0.6666 ≒66(%)
  2. 20,000(円)×66(%)=13,200(円)

家事按分④:業務時間で計算

ガソリン代を家事按分する際によく使われる方法です。

面積で家事按分する場合の「計算式」

  1. 「1カ月の業務時間」/「1カ月の総時間※1」=「仕事で使っている割合(%)」
  2. 「月の料金」×「仕事で使っている割合(%)」=家事按分で計上可能な金額

※1 1カ月の総時間30日の場合は720時間。31日の場合は744時間で計算。

業務時間で家事按分する場合の「計算例」

例)1日8時間 1か月20日業務(月30日計算) 月のガソリン代10,000円の場合

  1. 160(時間)/720(時間)=0.2222 ≒22(%)
  2. 10,000(円)×22(%)=2,200(円)

まとめ

この記事では、経費に「なるもの」と「ならないもの」、そして判断基準から家事按分までご説明しました。

経費にできるものとできないものを見分けるポイントは「仕事に関係しているかどうか」「その正当性を説明できるかどうか」です。

この2点を意識して経費にできるか、できないかを判断するようにすると良いでしょう。