資金の調達をする場合、金融機関の融資が代表的な方法ですが、審査が厳しく手続きに時間が掛かります。
そのため、ファクタリングに興味がある人も多いかもしれません。
- ファクタリングと融資の何が違うのかわからない
- ファクタリングと融資のどちらを利用すべきか?
- ファクタリングを利用しても大丈夫なの?
本記事を読めば、ファクタリングと融資の違い、個人事業主はどちらを利用すれば良いのか、ファクタリングを利用する際のデメリットや注意点を理解できます。
時間がない場合は、見出しを読むだけでも理解できるように解説しているので、融資やファクタリングに興味がある場合は、ぜひ読んでみてください。
ファクタリングと融資の6つの違い
ファクタリングと融資について、様々な点からどのような違いがあるのか解説します。具体的に違う点は以下の6つです。
- 調達できる金額
- 資金調達までのスピード
- 手続きの諸費用
- 審査内容
- 返済期間と返済方法
- 返済の義務
順番に解説します。
1.調達できる金額は金融機関の融資が多い
資金調達方法 | 主な会社 | 調達できる金額 |
ファクタリング | ビートレンディング | 30万円〜3億円 |
株式会社ウィット | 30万〜1億円 | |
株式会社No.1 | 50万円〜5,000万円 | |
融資 | ジャパンネット銀行 | 500万円 |
京都中央信用金庫 中信SDGsサポートローン | 3億円以内 | |
オージェイビジネスローン | 2,000万円 | |
日本政策金融公庫創業融資 | 3,000万円 |
「ファクタリング」で「資金調達」できる金額は、業者により違いますが、30万円〜3億円以上と幅広く対応している業者もあります。ただし、ファクタリングで資金調達できる金額は「売掛債権」の金額次第。そのため、売掛債権が100万円の場合、資金調達可能な金額は100万円から手数料を引いた金額です。
一方「融資」の場合は、金融機関により違いますが、3,000万円〜1億円以上の資金調達も可能。ただし、大手金融機関などでは、個人事業主向けのローン商品を取り扱っていないこともあるので注意が必要です
また、融資を行っているのは銀行だけではありません。「信用金庫での融資」「ビジネスローン」「日本政策金融公庫の融資」でも資金調達は可能です。このように、個人事業主でも数千万円であれば、資金調達が可能な金融機関もあります。
2.資金調達までのスピードはファクタリングが早い
資金調達方法 | 金融機関での融資 | ファクタリング |
資金調達までのスピード | 最短1日〜1ヶ月半程度 | 2社間は最短1日〜3日前後3社間は15日〜30日前後 |
ファクタリングの資金調達のスピードは、3社間ファクタリングよりも2社間ファクタリングの方が早いです。なぜなら、3社間ファクタリングの場合、売掛先である「取引先への通知や承諾」が必要になるから。
2社間ファクタリングであれば、必要書類が既に揃っていれば、即日での資金調達が可能です。
例えば、株式会社NO.1の場合、以下のように当日15:00までに契約が完了すれば、即日での資金調達が可能です。
- 相談・申し込み
- 審査
- 必要書類を揃える
- 契約完了
- 契約完了が15:00までなら即日での資金調達が可能
また、必要な書類も以下の4種類です。
主な必要な書類一覧 | |
取引の入金が確認できる書類 | 入金通帳・当座通帳など |
決算書 | 直近2期分 |
成因が確認できる書類 | 請求書・発注書など |
契約書 | 取引先企業の契約書 |
一方、金融機関での融資は資金調達に時間が掛かることが多いです。一部のビジネスローンでは、即日で融資が可能なケースもありますが「銀行」「信用金庫」「日本政策金融公庫」などから融資を受ける場合は、1週間〜1ヶ月は掛かります。
融資がファクタリングに比べて時間が掛かる理由は、以下の2つ。
- 審査に時間が掛かる
- 必要書類が多い
例えば、日本政策金融公庫で創業融資を受ける場合には以下の書類の提出を求められます。
- 借入申込書
- 創業計画書
- 通帳コピー
- 記帳がされた通帳(直近6ヶ月)
- 身分証のコピー
- 他社ローンの支払明細書
- 不動産の賃貸借契約書
- 固定資産税の課税証明書
- 住宅ローンの返済予定表
- 創業計画書
- 公共料金の支払明細書
- 確定申告書や源泉徴収票(直近2期分)
さらに、事業開始から1年以上経過している場合は、以下の書類も必要です。
- 企業概要書
- 納税証明書
- 売上を証明する書類
- 確定申告書・青色申告決算書・収支内訳書
このように、融資は必要書類を揃える時間も掛かるため、資金調達を急いでいない人向けの方法です。
3.手続きの諸費用が安いのは融資
資金調達方法 | 手数料 |
銀行での融資 | 年4.8%〜14.5% |
日本政策金融公庫での融資 | 年0.3%〜2.75% |
ビジネスローンでの融資 | 年3.1%〜18.0% |
信用保証協会での融資 | 年10.0%〜15.0% |
2社間ファクタリング | 10%〜20% |
3社間ファクタリング | 1%〜5% |
まず、融資の場合は「金利」、ファクタリングの場合は「手数料」が掛かります。金融機関での融資が年利に対して、ファクタリングの場合は、契約ごとに手数料が取られる点に注意してください。
ファクタリングは1回の契約で5%であっても、何度も利用すれば、契約のたびに手数料が掛かります。つまり、金融機関の金利とファクタリングの手数料を比べると、費用が抑えられるのは、金融機関での融資です。
またどちらの資金調達方法もそれぞれ「諸費用」が掛かることがあります。
ファクタリングの主な必要書類 | 金融機関での融資の主な必要書類 |
登記費用 | 事務取扱手数料 |
印紙代 | 印紙代 |
出張費用or交通費 | 司法書士報酬 |
事務手数料 | 抵当権設定費用 |
審査費用 | 割引手形取立手数料 |
留保金手数料 | 保証料(信用保証協会) |
このように手続き時には、様々な費用が掛かりますが、ファクタリングの場合、業者によっては一部の費用が手数料に含まれているケースもあります。
ファクタリングで借りる場合、なるべく手数料以外の費用が掛からない業者を利用しましょう。
4.ファクタリングと融資では審査内容が違う
資金調達方法 | 金融機関での融資 | ファクタリング |
審査の特徴 | ①返済能力重視財務内容や自己資金の有無も重視 ②担保の有無 ③経営計画書の内容 ④ブラックは即審査落ち | ①売掛先の信用が重視される ②2社間の場合は、借主の信用も見られる ③過去にブラックや赤字でも資金調達可能 |
ファクタリングはあなた自身の信用よりも「売掛債権の信用」が重視されるため、過去に返済を滞納していたり、赤字決算でも資金調達ができる可能性があります。
ただし、2社間ファクタリングの場合は、売掛先から入金された資金をあなたがファクタリング業者に支払う必要があります。そのため、あなたがきちんと支払日に支払ってくれなさそうと感じた場合は、利用を断られることがあるので注意が必要です。
一方、銀行などでの融資は、あなたに「返済能力があるか」を重視して審査します。提出した書類や審査の結果、
- 財務内容が悪い
- 赤字決算の年がある
ことがわかれば、審査に通る可能性はかなり低下します。
しかし、創業したばかりで資金がまだ乏しい個人事業主の場合は「日本政策金融公庫」なら他の金融機関よりも融資をしてもらえる可能性は高く、おすすめです。
ただし、
- 過去にカードやローンの返済を滞納したことがある
- 所得税や健康保険料などの税金を滞納している
場合は、どの金融機関でも審査に通りません。
参考:工藤公認会計士税理士/事務所銀行融資を受けるための鉄則10ヶ条
5.ファクタリングと融資では返済期間や返済方法が違う
資金調達方法 | 金融機関での融資 | ファクタリング |
返済期間 | 1年〜15年 | 30日〜45日 |
返済方法 | 元金均等返済元利均等返済 ステップ返済など | 支払日に一括支払い |
ファクタリングでは、業者への支払いをするタイミングは、売掛先から入金されてからすぐです。また、ファクタリングでは融資のように「分割支払い」はできません。必ず、一括で支払う必要があります。
ただし、どうしても支払いが難しければ、最長1ヶ月前後であれば、支払いを待ってもらえる可能性があります。一方、金融機関は返済まで期間が長く、1年〜15年前後に渡って返済を行うことが多いです。
金融機関の返済期間一覧 | |
ジャパンネット銀行ビジネスローン | 1年毎に自動契約5年毎に再契約 |
東京スター銀行ビジネスカードローン | 1年毎に自動契約 |
日本政策金融金庫マル経融資 | 運転資金は7年設備資金は10年 |
「運転資金」や「設備資金」などで多額のお金が必要で長期的に返済をしたい個人事業主に相性が良く、金融機関によって様々な返済方法が用意されています。
主な返済方式の特徴 | |
元金均等返済 | 毎月支払う元金の金額が一定になる元金の減少が早いので、総支払額は、元利均等返済よりも少ない最初の返済金額が高め |
元利均等返済 | 毎月支払う金額が一定になる返済開始時の負担が少ない総支払額が多くなる |
ステップ返済 | 契約当初の返済額が少なく、徐々に返済金額を上げていく |
参考:ナビナビキャッシング/ファクタリングしたけど返せない!返済できない時の対応方法4つを紹介!
6.融資は返済の義務があるが、ファクタリングは必ずしも返済の義務があるわけではない
資金調達方法 | 金融機関での融資 | ファクタリング |
返済の義務 | 必ず返済しなければならない | 返済の義務がある場合と ない場合がある |
ファクタリングの場合「リコースファクタリング」と「ノンリコースファクタリング」かによって返済の義務が違います。
リコースファクタリングでは、売掛先が倒産した場合、売掛債権を売却したあなたが買取代金を弁済する必要があります。しかし、ノンリコースファクタリングでは、売掛先が倒産しても、あなたには返済義務がありません。
そのため、ファクタリング業者は、初めから売掛先があなたに支払いができないリスクも考えて、審査や手数料率を判断します。リコースファクタリングやノンリコースファクタリングであるかは、契約書に記載されているので、契約時は必ず確認しておきましょう。
一方、金融機関で融資を受けた場合は、必ず返済をする義務があります。なぜなら、ファクタリングの売掛債権とは違い、借金だから。個人事業主の場合、日本政策金融公庫の創業融資についても、同じく返済の義務が発生します。
融資された金額は、返済の義務があるので、計画的に使用しましょう。
参考:岡本匠史税理士事務所
個人事業主は「ファクタリング」と「融資」どちらを申し込むべき?
ここまでファクタリングと融資の違いについて様々な観点から解説してきました。では、個人事業主の場合、どちらを利用すべきでしょうか?
融資を申し込むべき人とファクタリングを申し込むべき人に分けて解説します。
「融資」を申し込むべき人
融資を申し込むべき人は以下の4つです。
- 経営状況に問題がない
- 長期的な資金繰りを改善したい
- 分割での返済をしたい
- 金利が低い方法を選びたい
融資を申し込むべき人は、経営状況に問題がない場合や長期的な資金繰りを改善したい場合に利用すべきです。
経営状態に問題がなければ、金融期間の審査に通る可能性が高くなります。金利が低い「銀行」「信用金庫」「日本政策金融公庫」などから融資を受けると良いです。
また、金融機関での融資は、申込みから融資までに時間が掛かることが多いので、時間に余裕がある場合に利用しましょう。
「ファクタリング」を申し込むべき人
ファクタリングを申し込むべき人は以下の4つ。
- 金融機関からの融資を断られた
- 赤字や債務超過が発生したことがある
- 急ぎで現金が必要
- 過去に延滞や滞納をしたことがある
ファクタリングを申し込むべき人は「決算書」の内容が悪かったり「信用情報」に傷がついているなどの理由で金融機関からの融資を断られた人が中心です。また、売上が上がっているものの、売掛金の比率が高く、急ぎで現金が必要な場合も利用すべきです。
このように、金融機関の審査の結果だけでなく、自分の都合によってどちらの方法で資金調達をすべきかが変わります。
ファクタリングを利用する際のデメリットや留意点
ファクタリングは金融機関の融資に通らない場合や急ぎで現金が必要な場合でも利用しやすいですが、注意するべき点もあります。
- 3社間ファクタリングの場合は、取引先の承諾が必要
- 手数料が高いため利用しすぎに注意
- 売掛債権の金額内しか資金調達ができない
- 手数料が高い悪徳業者に注意
順番に解説します。
1.3社間ファクタリングの場合は、取引先の承諾が必要
ファクタリングのうち3社間ファクタリングの場合は、取引先の承諾が得られなければ利用できません。取引先にファクタリングの利用がバレたくない人は、取引先の承諾が必要ない2社間ファクタリングを利用しましょう。
また3社間ファクタリングの場合、承諾のための手続きも必要なので、ファクタリング業者からの入金に時間が掛かります。
2.手数料が高いため利用しすぎに注意
ファクタリングは、金融機関の融資よりも手数料が高いです。なぜなら、ファクタリングは、お金を借りるわけではないので、利息制限法が適用されないから。
1回あたりの手数料が5%でも、毎月同じ金額で利用していれば、年利60%の手数料を支払うことと同じになります。そのため、金融機関で融資を受けるよりも、支払うお金が多くなり、資金繰りが悪化する可能性もあります。
3.売掛債権の金額内しか資金調達ができない
金融機関で融資を受ける場合、自分の持っているお金よりも、多くの資金を借りることができます。しかし、ファクタリングで資金調達できる金額は、売掛債権の金額まで。
そのため、売掛債権の金額が少なければ、調達したい金額に届かないこともある点には注意が必要です。
4.手数料が高い悪徳業者に注意
ファクタリング業者は「悪徳業者」も多いので注意が必要です。悪徳業者の主な特徴は以下の4つです。
- 相場よりも明らかに高い手数料を請求された
- 契約時に理由をつけて契約書の発行をしない
- 分割払いを持ちかけてくる
- 支払いが期限通りにできない場合に執拗な取立てや脅迫をされた
ファクタリング契約の手数料が40%を超える業者は悪徳業者の可能性があります。公式サイトに記載されている手数料と契約時に提示された手数料に大きな差異がある場合も注意してください。
また、ファクタリングは「二重譲渡」ができません。ファクタリング契約をした後に、同じ売掛債権の買取を別の業者に依頼した場合、先に契約した業者は売掛金の回収を確実に行うため、取引先に債権譲渡が行われたことを通知します。そのため、あなたは取引先から信用されなくなり、最悪のケースでは、取引を停止されるかもしれません。
このようにファクタリングは、すぐに資金調達ができるメリットがあるものの、利用する際には注意が必要です。
まとめ
本記事では、ファクタリングと融資の違いについて解説してきました。
ポイントは、
- 手数料など諸費用が抑えられるのは金融機関での融資
- 資金調達のスピードが早いのは、ファクタリング
- 経営状況に問題がないのであれば、金融機関での審査が良い
- ファクタリングは利用しすぎると、手数料がかさむので注意
個人事業主は、日本政策金融公庫など個人事業主向けの商品を用意している金融機関で融資を受けることをおすすめします。