個人事業主の社会保険についてまるっと解説!会社員との違いも

会社員は給料から天引きされている社会保険料。しかし、個人事業主は加入手続きから納付まですべて自分で行う必要があります。

今回のテーマは、個人事業主の社会保険についてです。

「社会保険って何?」「会社員の頃とどう違うの?」と疑問符だらけの方はこちらの記事で一緒に社会保険について確認していきましょう。

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監修者
■監修者:マネーライフワークス代表 岡崎壮史
CFP認定、FP1級、社会保険労務士。2019年にマネーライフワークスを設立。現在は、厚生労働省の委託事業である「就労環境改善支援セミナー」と「過重労働解消のためのセミナー」の講師。セミナー実施回数は計100回以上。

社会保険とは?

まず「社会保険とは何か?」という基礎からみていきましょう。社会保険とは、公的医療保険・年金・労災保険・雇用保険・介護保険の5つのことを指します。

日常生活で陥る可能性のあるリスク対し、国民全体でお金を出し合って備える相互扶助の制度です。いざというときの個人の金銭的負担を軽減することができます。

個人事業主が支払うべき社会保険について

会社員の場合、社会保険料は毎月会社の給料から天引きされています。そのため、自分の社会保険料がどう計算され・いくらなのかあまり意識をしていない人の方がほとんどです。

しかし、個人事業主はそうはいきません。会社員とは違って、手続きも納付も自分で行う必要があるからです。ここからは個人事業主が支払うべき社会保険についてみていきます。

国民健康保険または国民健康保険組合

仕事以外の場面において発生した「病気やケガ」については、公的医療保険制度を活用することができ、自営業者や個人事業主が加入できる公的医療保険は「国民健康保険」になります。

会社員の場合、健康保険の任意継続(保険料は全額自己負担になるが、2年間限定(途中でやめることが出来ない)で会社で加入していた健康保険の給付を受けることが出来る制度)という制度もあるため、退職する以前にどちらの制度を適用するかをある程度決めておくことが望ましいです。

基本的に加入できる公的医療保険制度は1つですので、国民健康保険組合に加入するか、お住いの国民健康保険に加入するかを選択することになります。

そして、どこの国民健康保険組合の団体であったとしても、保障内容については、基本的に「国民健康保険」の制度がベースとなります。

それぞれ制度の内容は異なっていますので、比較検討の上選ぶようにしてください。

国民年金

国民年金は、日本に住所がある20歳から60歳までの方が全員加入することが義務付けられている、いわゆる、公的年金の1階部分の制度となっています。

個人事業主や自営業者は会社員や公務員ではないため、原則として、厚生年金保険の加入はできません。そのため、国民年金の未加入している形になります。

ここに記載されている方法(国民年金基金やiDeCo)以外にも「個人年金保険」なども活用することも考えられます。

いずれの方法について、運用については自己責任であることも忘れてはいけません。

労災保険

仕事中や通勤中に怪我をした際にお金が給付される労災保険。労災保険には「特別加入」という制度があり、特別加入の手続きを行うことで、個人事業主や自営業者であっても労災保険に加入することが出来ます。

雇用保険   

「失業手当」は、正しくは「基本給付」と言います。

また、退職等をした場合以外にも、スキルアップを図るために各種専門学校などに通った際の受講料のお一部を負担してくれる教育訓練給付金制度や育休・介護休業をしている者に対しても「育児休業給付金」や「介護休業給付金」といった給付などが行われます。

なお、雇用保険は個人事業主は原則として加入できませんが、雇っている従業員の過半数以上の人が加入を希望した場合は雇用保険に加入させなければなりません。

介護保険

介護保険は各市町村が保険者(運営を行うところ)となります。

40歳になりますと、各市町村から介護保険と国民健康保険の保険料を合わせて納付するようになります。

40歳から64歳までは公的医療保険料と一緒に支払います。65歳以上になると原則年金から天引きされます。

会社員と個人事業主の社会保険の違い

会社員と個人事業主の社会保険には違いがあります。具体的にどこが違っているのでしょうか?この章で詳しくみていきましょう。

個人事業主当事者(本人)のケース|公的医療保険と年金

公的医療保険には2種類あります。健康保険と国民健康保険です。会社員は「健康保険」、個人事業主は「国民健康保険」に加入することになります。

国民健康保険は健康保険に比べ手当が手薄くなってしまいます。出産手当や傷病手当もありません。「健康保険の任意継続」と「国民健康保険」のいずれを選択するかについては、以下の点に考慮する必要があります。

  1. 健康保険の任意継続を選択する場合
    原則として「2年間」の限定で会社の健康保険制度に加入することが出来ますが、正当な理由がない限り、途中でやめることが出来ません。また、保険料は「全額自己負担」になります。つまり、保険料の比較を行うにあたっては2年間の保険料の支払総額をもって判断する必要があるということです。
  2. 国民健康保険を選択した場合
    国民健康保険は健康保険と比べると「出産手当金」や「傷病手当金」の支給がないという点では、保障内容が手薄になると考えられるが、保険料については「前年の所得金額を基準として保険料の総額が計算される」ため、初年度だけで見ると、健康保険の任意加入の場合の方が有利となると考えられます。

しかし、2年目は退職後の初年度の所得が下がった状態が基準となるため、保険料の総額も大きく減少することが考えられます。

以下のことを踏まえた上で、どちらの制度を選択するかを考えることが望ましいです。

公的医療保険だけでなく、年金も会社員とは異なります。会社員は「厚生年金保険」、個人事業主は「国民年金」に加入します。

こちらも前述の通り、会社員の厚生年金に比べると個人事業主の国民年金は受給額が少なく、年金だけで老後を送ることは不可能です。iDeCoや国民年金基金をはじめとする他の年金制度を活用して、自ら年金額を増やしていった方が賢明です。

そして影響が大きいのはここから。この二つの制度、会社員の場合は会社と個人とで折半となります。つまり、個人が給与から天引きされる額は総支払額の半額となります。

しかし、個人事業主には負担をしてくれる会社がありません。そのため、全額自分で支払う必要があります。ここが社会保険における会社員と個人事業主の大きな違いです。

個人事業主の配偶者・家族のケース

会社員は年収130万円以下の配偶者を扶養家族とし、社会保険に加入させることができます。しかし、個人事業主の場合は、配偶者が年収130万円以下でも扶養家族として社会保険に加入させることはできません。扶養家族のメリットは受けられないことになります。

社会保険の扶養家族におけるメリットには、会社員本人のみの健康保険料で家族全員が医療費負担の軽減を受けることができたり、また配偶者分の年金を支払う必要がなかったりとお得なもの。これらが個人事業主には一切ありません。

医療費の自己負担分を軽減させるためには、配偶者分も国民健康保険料を納める必要があります。また、年金も配偶者分が必要です。

家族が多い会社員の方が脱サラをする際は「会社員の頃と比べて総支払額がいくら増えるのか?」をしっかり検討の上資金繰りをするようにしましょう。

個人事業主が従業員を雇ったらどうなる?

個人事業主が従業員を雇った場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)は強制適用(一部業種を除く)となりますので、まずは、労働保険の加入手続きを行います。

社会保険(健康保険や厚生年金保険)についても、5人以上の従業員を雇うことになったら強制適用となりますので、加入手続きが必要です。

なお、従業員が1~4人の場合であっても、全体の1/2以上が加入を希望する場合は加入手続きをしなければなりません。

個人事業主の社会保険と確定申告

社会保険料は個人事業主本人に関する費用であるため、事業とは関係ない費用となり、経費としては計上することが出来ないが、個人の確定申告を行う際については。社会保険料控除として、支払った全額を所得控除として計上することが出来ます。

まとめ

個人事業主は会社員と違って自分で社会保険の加入手続きをする必要があります。それだけではなく、医療保険や年金も全額自己負担。会社員に比べると自分で支払う額が多くなってしまいます。

脱サラをされた方の中には納付書を受け取って初めて気づく方もおり、毎年納付時期になると悲痛の声がSNS上から聞こえてきます。

会社員と個人事業主の社会保険は違いがたくさん。すべて自己責任となる個人事業主は、社会保険に関する知識も自ら勉強していく必要があります。