個人事業主は病気などで休業した場合、売上の保障がありません。そのため、健康診断を受けるべきか悩んでいる人も多いかもしれません。
- 個人事業主は健康診断を受けるべき?
- 健康診断を受けたい場合、どんな方法がおすすめ?
- 健康診断の費用は経費にできるの?
この記事では、個人事業主が健康診断を受けるべき理由、健康診断を受ける方法、健康診断の費用が経費になるのかについて解説します。
忙しい場合は、見出しを見るだけでも理解できるように解説していますので、ぜひ読んでみてください。
個人事業主は健康診断を受けるべき!
個人事業主の多くは「健康診断」を受けていません。その理由は「健康診断に行く時間がもったいない」「お金が掛かる」など様々です。
ただ、そのような理由があっても、個人事業主は健康診断を受けるべきです。なぜなら、個人事業主は体が資本だから。
会社員の場合は、病気に遭っても傷病手当金などがあり、回復後の仕事も保障されています。
しかし、個人事業主が病気に遭った場合は、
- 収入が一切発生しなくなる
- 取引先の信用を失う可能性もある
- 病気で一生働けなくなる
などのリスクがあります。
個人事業主の多くは、自分が働かなければ収入が発生しないため、病気で仕事がストップする事態は避けなければなりません。
健康診断を受ける義務はないですが、あらかじめ健康診断を受けておくことで、重い病気に罹るリスクを減らすことができます。そのため個人事業主は、年齢に関係なく、健康診断を受けるべきです。
従業員が必ず健康診断を受けられるように
また、従業員を雇っている個人事業主もいるでしょう。もし、従業員を1人でも雇っている場合は、「労働安全衛生法第66条」により、従業員に対して、1年に1回健康診断を受けさせなければなりません。
もし、健康診断を受けさせなければ、50万円以下の罰金を支払わなければなります。さらに、労働安全衛生法第66条の適用範囲は、正社員だけではありません。
アルバイトやパートでも、正社員の週所定労働時間の4分の3以上働いていれば、健康診断を受けさせなければなりません。
個人事業主が健康診断を受ける3つの方法
ここからは、個人事業主が健康診断を受ける3つの方法について解説します。個人事業主が健康診断を受けるためには以下の3つの方法があります。
- 自治体の一般健康診断
- 健康保険組合指定の医療機関で健康診断
- 自分の行きたい病院や検診センターで人間ドックを受ける
順番に解説します。
1.自治体の一般健康診断
市区町村など各自治体は、無料もしくは格安の料金で「一般健康診断」を行なっています。また、公的医療保険に加入している40〜74歳の人は「特定健康診査」(メタボ健診)も受診可能です。
例えば、東京都足立区の場合、以下の検診が受けられます。
- 特定健診
- 40歳前の健康づくり検診
- 簡易血液検査
- 各種がん検診
- 成人歯科検診
- 糖尿病・成人眼科検診
なお、自治体検診データベースでは、全国の自治体が開催している健康診断の「検診内容」「対象者」「受診場所や料金」などの情報を閲覧できます。興味のある方は、確認してみてください。
参考:自治体検診データベース / 足立区公式サイト
2.健康保険組合指定の医療機関で健康診断
「健康保険組合指定の医療機関」で健康診断を受けることができます。健康保険組合指定の医療機関で健康診断を受けるためには、以下の2つの方法があります。
- 会社を退職した際に健康保険組合で手続きをする
- 業種独自の健康保険組合に加入する
個人事業主の場合は、以下のような健康保険組合などで健康診断を受診可能です。
文芸美術 国民健康保険組合 | 文芸・美術・映画・写真などの事業をしている 組合加盟の各団体の会員と家族 |
建設連合 国民健康保険組合 | 建設工事に関する業種に従事している 本人・従業員・家族が対象 |
東京美容 国民健康保険組合 | 東京都内に事業所があり、美容業務を行っている 本人・従業員・家族が対象 |
関東信越税理士 国民健康保険組合 | 関東信越税理士会会員である 税理士・職員・家族が対象 |
例えば、ライターやクリエイターの場合は「文芸美術国民健康組合」に加入すると、基本検査・人間ドック・PET検査などの検査費用を一部負担してもらえます。
参考:文芸美術国民健康保険組合 / 建設連合国民健康保険組合 / 東京美容国民健康保険組合 / 関東信越税理士国民健康保険組合
3.自分の行きたい病院や検診センターで人間ドックを受ける
30歳以下で市区町村の一般検診が受けられない場合などは、近くの病院などでも有料で健康診断を受けられます。
ただし、費用は保険の対象外なので、数千円〜10,000円を支払わければなりません。検査内容や金額は医療施設により違うので、事前に医療機関に確認を取ることをおすすめします。
健康診断と人間ドックでは検査項目や費用が違うので注意
「健康診断」と「人間ドック」は、検査できる項目や費用が違うので注意が必要です。
健康診断は、厚生労働省の労働安全衛生法によって自治体が実施することを定められています。
健康診断で検査する項目は10〜15前後。
- 身長や体重
- 胸囲
- 視力・聴力検査
- 診察
- 血圧測定
- 肝機能検査
- 尿検査
- 心電図など
あくまでも、基本的な項目のみが検査対象なので、検査費用も安いです。一方、人間ドックは、一般健康診断よりも精密な検査を行うことができ、診断項目の数は50〜100項目。
例えば、一般健康診断では目の検査は視力だけ測りますが、人間ドックでは眼圧・眼底の検査も行います。
他にも「肺機能検査」「腫瘍マーカー」「胃カメラ」なども行うので、健康診断だけではわからない病気の早期発見も可能です。
その分、健康診断よりも費用が掛かります。
結局どの健康診断の料金が安いの?
健康診断によって受診できる項目が違いますが、結局どの方法で「健康診断」や「人間ドック」を受ければ診断料金が安くなるのでしょうか?
人間ドックの場合
まず、人間ドックを受けるなら、自分で病院を見つけるよりも、健康保険組合に加入して受診した方が費用を抑えられます。
以下の表は、豊島区の医療機関を利用する際に、自分で受診した場合と「東京美容健康保険組合」で受診した場合に掛かる費用です。
医療機関 | 東京美容健康保険組合 | 自分で受診した場合 |
池袋ロイヤルクリニック | 40,000円 | 47,000円 |
総合健診センター ヘルチェック | 38,000円 | 47,500円 |
サン虎ノ門クリニック | 42,000円 | 47,000円 |
どの医療機関で人間ドックを受けても、東京美容健康保険組合の費用が安いです。
健康診断の場合
次に、健康診断を受ける場合、診断項目に違いがあるものの、自分で医療機関に行き健康診断を受けるよりも、自治体で受ける方が費用が掛かりません。
検診項目によっては無料で受けられるので、積極的に自治体での健康診断を利用すべきです。
池袋ドルフィンクリニック | 豊島区での検診 | |
生活習慣病など健康診断 | 13,200円 | 無料 |
胃がん検診 | 16,500円 | 無料 |
参考:東京美容国民健康保険組合 / 総合健診センターヘルチェック / 池袋ロイヤルクリニック / サン虎ノ門クリニック / 池袋ドルフィンクリニック / 豊島区公式サイト
個人事業主の健康診断費用は、基本的に経費や医療費控除の対象外
個人事業主の場合、健康診断の費用も経費や医療費控除の対象になるのか気になっている人もいるかもしれません。
残念ながら、個人事業主の健康診断費用は、基本的に「経費」として認められません。なぜなら、健康診断の費用は、事業の売上のために必要な費用ではないからです。
また健康診断は、あくまでもあなたが健康であることを確認するために行います。そのため、医療行為にも当たらないので「医療費控除」の対象外です。
マッサージを受けた場合も同様ですが、以下のケースでは経費として認められる可能性があります。
- マッサージ会社の経営者・従業員が偵察目的でマッサージ店を利用した場合
- ライターなどが取材目的で施術を受けた場合
さらに、医師の指導により治療目的でマッサージを受けた場合、個人の医療費控除の対象にはなります。
診断の結果重大な病気が見つかったら、医療費控除の対象になる
個人事業主の健康診断費用は経費や医療費控除の対象外ですが、健康診断を受けて病気が見つかり治療をした場合は、治療費と健康診断費用は医療費控除の対象になります。
確定申告の際に忘れないように申告しましょう。
従業員の健康診断費用は、福利厚生費として経費になる
個人事業主として従業員を雇っている場合、健康診断を受けさせる義務があります。従業員が受けた健康診断の費用は福利厚生費として経費にすることが可能です。
まとめ
本記事では、個人事業主は健康診断をするべきかについて解説してきました。個人事業主は、体が資本なので、健康診断の受診をするべきです。
また、生命保険会社が提供する「就業不能保険」や損害保険会社が提供する「所得保障保険」を利用すれば、病気や怪我で仕事ができなくても収入が保証されます。
団体名 | 主な保障内容 |
フリーランス協会 (WELBOX加入者) | 通常の47.5%割安な保険料で所得補償制度に加入できる人間ドックを割安な価格で受けられる |
全国デジタル・オープン・ネットワーク事業協同組合 | 1年まで所得補償保険を受けられる |
あんしん財団 | 怪我をした際の保証が受けられる健康診断は2,000円、人間ドックは20,000円まで助成金 |
健康診断を受けて健康に気をつけるだけでなく、万が一のことも考えて「就業補償保険」や「所得補償保険」には入っておきましょう。