両立支援等助成金は個人事業主でも、もらえる?

「子育てでこれまでのように働けなくなった」「親の介護がはじまった」、などの理由で退職する人が増えています。人手不足が深刻な社会問題になっているいま、自社のノウハウを持った優秀な従業員が働きやすい環境にしようと取り組んでいる事業主の方も多いのではないでしょうか。

事業主が行なう子育てや介護に対する取り組みに対し、支給される助成金があります。それが両立支援等助成金です。

両立支援等助成金とは

「両立支援等助成金」とは、従業員が働きながら育児や介護などを行なうことを積極的に支援する事業主に対して支給される助成金です。

この両立支援等助成金は全部で4コースあり、目的によってコースが異なります。冒頭でお伝えしたとおり、昨今では育児や介護などさまざまな事情で、仕事を辞めざるをえない人が増えています。一方、少子高齢化の影響で働き手は減るばかり。両立支援等助成金はこのような社会問題に対し、積極的に取り組む事業主がもらえるごほうびのような制度なのです。

個人事業主は両立支援等助成金を使えるの?

では、個人事業主は両立支援等助成金を使えるのでしょうか。その答えは、一部コースの両立支援等助成金なら使えます。しかし、両立支援等助成金は事業主本人に対して申請することはできません。なぜなら事業主は雇用保険の被保険者ではないから。個人事業主でも、雇用保険に加入している従業員がいるなら利用できるのです。

中小企業区分とは

両立支援等助成金は、中小企業と中小企業以外の企業で支給額に違いがあります。ここでいう「中小企業」とは、以下の表のように資本金もしくは労働者数で判断します。また、個人事業主など資本金のない事業主については、常時雇用する労働者の数で考えます。

[中小企業の範囲]


資本金額または出資額常時雇用する労働者数
小売業(飲食店含む)5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他3億円以下300人以下

両立支援助成金が受けられる基本的な要件

助成金を申請するには前提として、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 雇用保険適用事業所の事業主である
  • 支給のための審査に協力できる
    -支給または不支給の決定のための審査に必要な書類などを整備・保管していること
    -支給または不支給の決定のための審査に必要な書類などの提出を、管轄管轄労働局から求め られた場合に応じること
    -労働局からの実地調査などを受け入れること など
  • 申請期間内に申請を行なうこと

参照:「両立支援等助成金 支給申請の手引き」厚生労働省

これはNG!受給できないケース

以下の条件のいずれか1つでも該当する事業主は、助成金を申請することができません。

  1. 不正受給をして3年以内に支給申請した事業主、あるいは支給申請日後、支給決定日までの間に不正受給をした事業主
  2. 支給申請日の属する年度より前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していない事業主(支給申請日の翌日から起算して2ヶ月以内に納入を行なった事業主を除く)
  3. 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反があった事業主
  4. 性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれら一部の営業を受託する営業を行なう事業主
  5. 暴力団関係事業主
  6. 支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
  7. 不正受給が発覚した際に都道府県労働局等が実施する事業主名等の公表について、あらかじめ同意していない事業主

参照:「両立支援等助成金 支給申請の手引き」厚生労働省

【2020年】両立支援等助成金4つのコース

繰り返しになりますが、両立支援等助成金には4つのコースがあります。また両立支援等助成金は生産要件を満たせば、各コースにおいて助成金が割増で受け取ることができます。その生産要件とは、以下の2つです。

  • 助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、
    -その3年前に比べて6%以上伸びていること 
    または
    -その3年前に比べて1%以上(6%未満)伸びていて、金融機関からの一定の「事業性評価」を得ていること 
  • 1の算定対象となった期間について、雇用する雇用保険被保険者を事業主都合によって解雇等(退職勧奨を含む)していないこと

参照:「両立支援助成金」厚生労働省

ここからは両立支援等助成金の4つのコースについて具体的に解説します。

1.出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

出生児両立支援コースは、男性の育児休業や育児目的休暇の取得促進を目的としています。つまり、男性従業員に対して育児休業を取得させた事業主に対して、助成金が支給されます。

支給される金額は以下の図のとおりです。支給額の < >内は、生産性要件を満たした場合の支給額です。

引用:「2020年度 両立支援等助成金のご案内」厚生労働省

表の①については、要件を満たす育児休業者がはじめて生じた場合のみ利用できます。②については過去に男性が育児休暇を取得した実績がある事業主も対象です。

2.介護離職防止支援コース

介護離職防止支援コースは、仕事と介護を両立することを目的としたコースです。こちらは中小企業事業主が対象です。

この助成金を申請する場合は、まず介護の必要が生じた従業員と企業側が面談を行ない、面談結果を記録します。その上で介護の状況や、今後の働き方についての希望などを確認し、面談内容をもとにプランをを作成。プランに沿って従業員のスムーズな介護休業の取得・職場復帰に取り組んだ事業主に助成金を支給します。または、介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支援制度)の利用者が生じた中小企業事業主に支給されます。

支給される金額は以下の図のとおりです。

引用:「2020年度 両立支援等助成金のご案内」厚生労働省

介護離職防止支援コースは1事業主1年度につき、5人まで支給されます。

3.育児休業等支援コース

育児休業等支援コースは、育児を行う従業員が安心して育児休業を取得し、職場復帰しやすい環境を図ることを目的としています。こちらも中小企業事業主が対象です。

この助成金を申請するためには「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って労働者の円滑 な育児休業の取得・職場復帰に取り組みます。そして、育児休業を取得した従業員が生じた中小企業事業主に支給されるコースです。

引用:「2020年度 両立支援等助成金のご案内」厚生労働省

A・Bとも1事業主2人まで支給です(雇用期間の定めのない 労働者1人、有期雇用労働者1人)

また、「職場復帰時」については「休業取得時」を受給していない場合は申請することができません。

4.再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)

再雇用者評価処遇コースは、育児・介護などを理由とした退職者の復職支援と、企業の生産性向上のための再雇用支援を目的としています。

妊娠・出産・育児・介護・配偶者の転勤または転居を伴う転職を理由とした退職者について、退職前の勤務を評価する「再雇用制度」を周知した上で、再雇 用の実績が生じた事業主に以下表の額が支給されます。支給される金額は以下の図のとおりです。

引用:「2020年度 両立支援等助成金のご案内」厚生労働省

1事業主あたり5人まで支給され、継続雇用6ヶ月後・継続雇用1年後の2回に分けて半額ずつ支給されます。

個人事業主もOK!出生時両立支援コースと再雇用者評価処遇コースの基本

ここまでお伝えした4つのコースのうち、個人事業主が申請できるのは以下の2つです。

  • 出生児両立支援コース
  • 再雇用者評価処遇コース

この2つのコースについて、申請に必要な基本事項をお伝えします。

もらえる金額

前述の各コースでも図でお伝えしたとおりの金額が支給されます。出生児両立支援コースの場合は、はじめて男性の育児休業者が生じた場合には57万円(生産要件を満たせば72万円)、再雇用者処遇コースの場合は1人目で38万円(生産要件を満たせば48万円)受け取ることが可能です。

必要書類

必要書類については、さまざまな書類を提出しなければなりません。厚生労働省の「事業主の方への給付金のご案内」から必要な書類をダウンロードすることができます。

むずかしくはありませんが、書類作成には手間がかかるため、社会保険労務士などに助成金申請をアウトソースしてもいいでしょう。

申請期限

助成金申請には、細かいスケジュール管理が求められます。各コースや申請のタイミング・該当条件により、申請期限が異なるため、厚生労働省の「事業主の方への給付金のご案内」に沿って申請するようにしましょう。

申請先

事業主の所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室) に書類を提出します。

郵便でもショルを送付することができますが、その場合は簡易書留で送付してください。 また、申請期間内に労働局に到達していることが必要ですので、余裕を持った申請を心がけましょう。

まとめ:助成金を活用して、優秀な従業員が活躍できる環境を整えよう

両立支援等助成金は、一部のコースであれば個人事業主も申請することが可能です。雇用保険に加入させている従業員がいる場合は、従業員の育児や再雇用などのライフイベントが生じたときに、助成金が使えることを覚えていてください。また、このようにライフステージが変わっても働きやすい環境が整っている企業なら、優秀な従業員がますます活躍してくれることも期待できます。

注意点としては、両立支援等助成金をはじめとする助成金は、毎年内容が変更されること。最新の情報は厚生労働省のホームページをチェックするようにしてくださいね。