フリーランスは、毎月の給与から税金が天引きされる会社員と違い、自分で税金を計算・納付しなければなりません。これらを行なうためには、税金について正しく知っておく必要があります。
経理処理をあとまわしにし、税金の支払いをうっかり忘れていると延滞税がかかることも。この記事では、フリーランスが支払う税金の基礎知識について解説します。
フリーランスの税金はどうやって決まるの?
フリーランスの税金は、収入によって決まります。税務上、フリーランスの収入は事業所得とされていて、所得税や住民税の対象です。
さらに一定の売上を越えると、消費税や個人事業税が発生する仕組みです。
フリーランスは税金が高い?会社員の税金と比較してみよう
まずはフリーランスと会社員が納める税金を、以下の表にまとめています。
フリーランス | 会社員 | |
所得税 | ○ | ○ |
住民税 | ○ | ○ |
個人事業税 | 売上による | – |
消費税 | 売上による | – |
固定資産税 | ○ | ○ |
社会保険料 | ○ | 半額負担 |
表にあるとおり、所得税や住民税は両者とも支払う税金です。固定資産税は持ち家など固定資産がある場合には、どちらにもかかる税金です。
次に個人事業税や消費税は、フリーランスにのみ発生する税金ですが、売上により発生するかどうかが決まります。
社会保険料については、フリーランスは全額負担、会社員は半額負担でのこりは企業が負担してくれます。さらに税金の控除について考えると、会社員は収入に応じで65万円〜最大220万円まで控除されるのに対し、フリーランスは65万円の控除のみです。
収入によりケースバイケースではあるものの、税金においてはフリーランスより会社員の方が有利だといえます。
フリーランスが支払う税金5つと社会保険料
さきほどお伝えしたとおり、フリーランスが支払う税金は会社員より多くなることがあります。ここ
からはフリーランスが支払う税金と社会保険料について、具体的に解説します。
所得税
所得税とは、その年の1月1日〜12月31日までの間に働いて得た個人の所得に対して課せられる税金です。1年間の所得合計が38万円をこえると、確定申告で所得税額を計算し納めなければなりません。
所得税は所得が高くなるほど、税率もあがる「累進課税制度」が取られていて、税率は5%〜45%。
国税庁のホームページに掲載されている、所得税の速算表は以下のとおりです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
引用:国税庁「所得税の税率」
1年間の所得から、医療費控除などの所得控除を差し引き、のこった金額に所得税率をかけると、所得税額を計算することができます。
また、所得税の納付は、現金の場合毎年3月15日まで。口座振替の場合は4月下旬に指定口座から引き落とされます。
住民税
住民税とは、住んでいる都道府県と市町村に納める税金です。住民税を分解すると、都道府県民税と市町村民税から成り立っています。納税者が住んでいる自治体が、住民サービスなどを行なうために課税します。
住民税は所得税の確定申告書をもとに計算されるため、基本的に住民税のための確定申告は不要です。例外として、住民税と所得税では基礎控除などの金額に違いがあり、所得税の確定申告が必要ない人でも住民税の申告をしなければならない場合があります。所得税の確定申告をしなくてよい場合は、住民税の申告は必要かどうか気をつけるようにしましょう。
住民税の納付書は、毎年6月ごろに各市町村から送付されてきます。納付は6月末、8月末、10月末、1月末の4回に分けて支払いますが、一括で納付することも可能です。
個人事業税
個人事業税とは、公共サービスの財源となる税金で、事業所の所在地として届け出ている都道府県に納める税金です。
この個人事業税は、フリーランス全員が対象となるわけではなく、年間所得合計が290万円以上のになると発生します。業種により税率は3〜5%の間で変わりますので、自社がどの税率に該当するのか確認しましょう。
確定申告を行なっていれば、住民税と同じように納付書が送られてきます。納付期限は第1期が8月末日、第2期が11月末日です。
消費税
消費税とは、ご存知のとおり物やサービスの売買をする際にかかる税金です。消費税の納税義務は、原則前々年度の課税売上高が1,000万円以下であれば免除されます。
消費税の申告・納税義務のある事業者を「課税事業者」とよびます。課税事業者になった際には「消費税課税事業者届出書」を提出する必要がありますので、覚えておいてください。
納付期日は、現金の場合3月末日です。口座振替の場合は4月末日に指定口座から引き落とされます。
固定資産税
フリーランスの場合、自宅の一部分をオフィスにしている方も多いでしょう。この自宅が持ち家の場合、固定資産税がかかります。
自宅の一部をオフィスにしているので、その事業割合に応じて按分した固定資産税の額を経費として計上することができます。
固定資産税の納付期限は4回に分かれています。住んでいる市区町村によって納付期限が違うため、固定資産税の通知書と納付書が届いたら、しっかりと期日を確認して納付が遅れないようにしましょう。
5つの税金の他に社会保険料も納める必要がある
社会保険料とは、健康保険料や国民年金のこと。社会保険料もフリーランスが支払わなければならないものの1つです。
この社会保険料の額も、所得によって決まります。会社員時代にも、毎月社会保険料が引かれていたのはご存知かと思います。しかし、会社員の場合は、企業があなたの社会保険料を半分負担してくれていました。
一方、フリーランスになると社会保険料を全額自己負担する必要があります。そのため、社会保険料が高くなった・・・と感じる方が多いのです。
ちなみに国民健康保険の納付時期は、毎年6月からスタートし10回払いです。国民年金は毎月支払う必要があります。
また、健康保険に関しては、会社員時代には発生しなかった扶養家族分の健康保険料も発生します。扶養家族が妻と子の2人いる方の場合、会社員であれば健康保険料を1人分支払えばよかったのに対し、フリーランスは自分・妻・子の3人分支払う必要があるのです。
健康保険に関しては、会社員のときに加入していた健康保険に2年間限定で「任意継続」できることがほとんどです。ただし、退職後すぐに手続きしなければならないなど諸条件があります。まだフリーランスになる前の方は、自分の企業が加入している健康保険の「任意継続制度」について調べてみてくださいね。
税金には「経費にできるもの」と「できないもの」がある
ここまでは、フリーランスが支払う税金についてお伝えしてきました。その税金の中でも、実は経費にできる税金があるのです。ここからは経費にできる税金・できない税金について解説します。
経費にできる税金
経費にできる税金は、個人事業税・固定資産税(事業で使用している部分)・消費税などがあります。
まず個人事業税は、フリーランスが経費にできる税金の代表です。一定以上の売上になると事業を行なう上で必ず発生する税金のため、経費にすることができるのです。
また、前項でお伝えしたとおり、持ち家の事業使用部分にかかる固定資産税を経費として計上することができます。
消費税は、税抜き経理をしている場合は消費税を租税公課(※)として計上しませんが、税込経理をしている場合には租税公課として経費計上が可能となります。
※租税公課とは、国や地方に納める税金「租税」と国や公共団体に納める諸々の会費、交付金、罰金等の公的な課金「公課」を合わせた勘定科目のこと。事業に関連するものであれば、一部経費として認められる場合がある。
経費にできない税金
税金は経費にできないという考え方が基本です。そのため、所得税や住民税は経費として計上することができません。また、事業で使用していない家などの固定資産税も経費にはなりません。
そして、税金の加算税・延滞税・罰金・過料なども経費とはならないので覚えておきましょう。
まとめ:税金について理解し、必要以上に納付しなくてすむようにしよう
フリーランスになると、確定申告で税金を計算し、納付や納付スケジュールの管理まで自分で行なう必要があります。しかも、税金の中には経費として計上できるものもあるため、そのことを知らずに経理処理をすると損してしまうことも。
また、社会保険料の「任意継続」のように、知らなければそのまま手続きのチャンスを逃してしまうものもあります。
税金や社会保険料については、自分で学ばなければだれも積極的に教えてくれません。フリーランスが支払う税金やその取り扱い方を正しく理解し、必要以上に税金・社会保険料を支払わなくてすむようにしておきましょう。