ファクタリング契約では、契約書のやりとりが必要です。しかし、初めてファクタリング契約をする場合、
- どのような流れで契約をするのか?
- 契約の際の注意点は?
- 必要書類や手数料はどのぐらい掛かるのか?
ファクタリングに関する悩みを持っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、ファクタリング契約の流れ、契約に必要な6つの書類、ファクタリングの費用や手数料などについて解説します。
時間がない場合は、見出しを読むだけでも理解できるように解説しているので、ぜひ読んでみてください。
ファクタリング契約の流れを解説
ファクタリングの契約方法は「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」があります。
2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | |
契約者 | あなた ファクタリング業者 | あなた 取引先 ファクタリング業者 |
取引先への通知 | 必要なし | 必要 |
手続きの時間 | 短め | 長くかかる |
それぞれの契約の流れについて、順番に解説します。
2社間ファクタリングは、ファクタリング業者と1対1で契約をする
2社間ファクタリングとは、あなたとファクタリング業者のみで「売掛債権」の取引をすること。
2社間ファクタリングの契約の流れは以下の通りです。
- 売掛債権が発生
- 相談・申し込み
- 必要書類の提出
- 債権の審査
- 債権の金額確定
- 契約締結
- 買取代金振り込み
- 売掛金の支払いが行われる
- ファクタリング会社へ支払う
そもそも、売掛債権とは、商品やサービスを提供した時にその代金を請求できる権利のことです。
日本の商習慣においては、掛取引が一般的。そのため、個人事業主が商品やサービスを提供した場合、すぐにお金がもらえるというわけではありません。契約内容によっては、納品後1ヶ月~3ヶ月後に代金が支払われるケースもあります。
こうした場合に、代金の支払いを約束するものとして売掛債権(簡単に言えば、請求書)を作成して取引を行うのです。
話を本題に戻します。ファクタリング業者に申し込みに行く際は、まずファクタリング業者の公式サイトや電話などから問い合わせを行います。
対面でのやり取りが必須の業者もあれば、すべての作業がオンライン上で完結する業者もあります。
ファクタリングを申し込み、売掛金証明書類や確定申告書など審査に必要な書類を提出すれば、審査に入ります。審査に通ると、「いくらで債権を買い取ってもらえるか」という金額がファクタリング会社から提示されます。
金額などの条件に問題がなければ、「契約書」や「納税証明書」などの書類を提出します。なお、契約書の控えをもらえるので、必ず保管しておいてください。
契約当日〜数日であなたの銀行口座に債権の価格から手数料を引いたお金が振り込まれます。
取引先から、売掛金が支払われれば、ファクタリング業者に提示されている債権の金額を振り込みます。
以上が、2社間ファクタリングの契約手順です。契約手続きをするのは、あなたとファクタリング業者だけなので、取引先にバレる心配もありません。
3社間ファクタリングはあなたとファクタリング業者・取引先で契約する
3社間ファクタリングとは、「あなた」「取引先」「ファクタリング業者」の3社間でファクタリングを行うこと。
3社間ファクタリングの契約の流れは以下の通りです。
- 売掛債権が発生
- 相談・申し込み
- 必要書類の提出
- 債権の審査
- 債権の金額が確定
- 取引先へ債権譲渡の通知や同意を得る
- 契約締結
- 買取代金を振り込み
- 売掛先から直接ファクタリング業者に振り込み
まず、買い取って欲しい売掛債権を選んで、ファクタリング業者に申し込みをします。必要書類の提出が済み次第、債権の審査に入ります。
2社間ファクタリング・3社間ファクタリングのどちらとも、あなたの信用だけではなく、売掛債権の対象になる取引先を審査します。
審査通過後、「債権の買取金額」を提示されます。
そして、3社間ファクタリングの場合、事前に債権譲渡の通知や承諾が必要です。この際、ファクタリング業者が同意を得るためのフォローなどをしてくれるので、取引先との交渉が苦手な場合でも問題ありません。
契約書や納税証明書などの書類をファクタリング業者に提出すれば、契約成立です。
契約成立後、当日から数日であなたの銀行口座に「債権の価格から手数料を引いたお金」が振り込まれます。
最後に、取引先は売掛金の支払日になったら、あなたではなく、ファクタリング業者に直接お金を振り込みます。
このように2社間ファクタリングと3社間ファクタリングでは、
- 事前に取引先への通知や承諾が必要
- 取引先がファクタリング業者に直接売掛金を支払う
という違いがあります。
そのため、3社間ファクタリングの場合、2社間ファクタリングよりも、買取代金が振り込まれるまでに時間が掛かることが特徴です。
ファクタリング契約で必要な6つの書類とは?
ファクタリングの契約で必要な書類について解説します。個人事業主やフリーランスが契約する際に必要な書類は以下の通りです。
審査時に必要 | 本人確認書類 | 運転免許証など |
売掛金証明書類 | 売買契約書 請求書 取引基本契約書 業務委託契約書など | |
確定申告書1期分 | 青色申告時は、 ・申告書B 控え ・所得税青色申告決算書 白色申告時は、 ・申告書B 控え ・収支内訳書 | |
通帳の写し | 入出金の記録が残っている通帳 | |
契約時に必要 | 印鑑証明書 | 個人の印鑑証明書 |
納税証明書 | 納税証明書その1 納税証明書その2 |
個人事業主は、「履歴事項全部証明書」「法人の印鑑証明書」「決算書」の提出は不要です。
代わりに「確定申告書」の提出を求められる点が大きな違いです。
ここからは順番に必要な書類について解説します。
1.本人確認書類
「本人確認書類」は、「運転免許証」や「パスポート」など身分を証明できるものを用意します。審査の前に提示が必要です。
2.売掛金証明書類
売掛金証明書類とは、売上があることを証明する書類。取引先と契約時に結んだ「業務委託契約書」や「請求書」でも大丈夫です。
売掛金証明書類がなければ、ファクタリング業者は、本当にあなたが取引先と契約関係にあるのか、わかりません。
3.確定申告書1期分
個人事業主やフリーランスの場合、決算書の代わりに提出する書類が「確定申告書」です。
青色申告の場合、申告書B 第一表と第二表の控えと、所得税青色申告決算書(一般用・農業所得用・不動産所得用)の提出をします。
一方、白色申告の場合に提出する書類は、申告書B 第一表と第二表の控えと、収支内訳書(一般用/農業所得用/不動産所得用)です。
確定申告書では、売上が安定的に発生しているかという点を見られます。
4.通帳の写し
「通帳の写し」は、過去の入出金履歴が確認でき、取引先からの入金の遅れがない点や継続して取引ができているのかという点をチェックされます。
紙の通帳だけでなくWEB明細も認められています。
5.印鑑証明書
「印鑑証明書」とは、契約書などに押した印鑑が本物であることを証明する書類です。法務局で取得でき、発行日より3ヶ月以内のものしか認められません。
6.納税証明書
「納税証明書」は、あなたが税金をきちんと納めていることの証明です。納税をきちんとしていなければ、利用できないファクタリング業者もあるので注意してください。
また納税証明書にはいくつか種類がありますが、このうち個人事業主が提出する書類は以下の2つです。
- 納税証明書その1
- 納税証明書その2
このように個人事業主と法人とでは提出する書類が違います。すぐにファクタリングの契約をするためには、必要な書類を不備なく揃えておかなければなりません。
なお、ファクタリング会社や契約内容により、必要書類が若干違うこともあります。そのため、事前にどの書類を用意しておけばよいのか確認しておきましょう。
ファクタリングを契約する際の費用や手数料の相場は?
ファクタリングを契約をする際にかかる手数料や費用の相場はどのぐらいなのか解説します。
ファクタリングの手数料は入金額の1%〜20%
契約の種類 | 手数料の相場 |
2社間ファクタリング | 5%〜20% |
3社間ファクタリング | 1%〜5% |
ファクタリングの手数料の相場は、2社間ファクタリングで5%〜20%、3社間ファクタリングで1%〜5%です。
ファクタリング業者が公式サイトに記載している手数料を確認しても、概ね相場通り。
手数料が明らかに高い業者は悪徳な業者の可能性があるので契約をしないことをおすすめします。
ファクタリング契約をする時は、手数料以外の費用があるか確認する
ファクタリング契約をする場合に必要なお金は手数料だけではありません。例えば以下の手数料が掛かることがあります。
- 初回手数料
- 印紙代(登記時)
- 出張費
- 審査費用
手数料以外の費用が掛かるかは業者により違います。
「審査費用」が掛かる業者もあれば、「印紙代」や「初回手数料」については一切掛からない業者もあるので、手数料と諸費用を合わせた金額で比較することが大切です。
個人事業主がファクタリング業者を利用するために必要なこと
個人事業主は、「売掛債権」が少額のケースが多いことや資産状況が不透明と思われがちです。
そのため、審査に通りにくかったり、個人事業主の申込みを受け入れないファクタリング業者もあります。
では、個人事業主がファクタリング業者を利用するためには何をすれば良いのでしょうか?
以下の3つの方法があります。
- 買い取ってもらう売掛債権は金額が高く継続して取引しているものに限定
- 確定申告を青色申告で行い、会計士や税理士にみてもらう
- 個人事業主でも条件が緩いファクタリング業者を利用する
売掛債権は金額が高く継続して取引しているものに限定
ファクタリング業者は買い取る売掛債権の金額が高いほど利益も大きくなります。したがって、売掛債権の金額が少なければ、契約をしたくない業者もいます。
また、一般的に取引先の売掛債権は、個人よりも法人の信頼が高いです。
ファクタリング業者を利用する場合は、なるべく売掛債権の金額が高い法人を選ぶことで審査に通りやすくなります。
確定申告を青色申告で行い、会計士や税理士にみてもらう
法人の「決算書」と比べて個人事業主が行う確定申告は資金の状況が不透明です。
そのため、白色申告よりも取引内容が詳しく記入されている「青色申告」で確定申告を行うことをおすすめします。
さらに、確定申告書を「会計士」や「税理士」にチェックしてもらえば、ファクタリング業者の信頼が良くなるので、審査に通る可能性も上がります。
個人事業主でも条件が緩いファクタリング業者を利用する
個人事業主の申込みを受け付けるかは、ファクタリング業者によって違い、売掛債権の金額が10万円からでも利用できる業者も出ています。
そのため、売掛債権の金額が少ない場合は、金額が少なくても買取を行ってくれる業者を選ぶようにしましょう。
ファクタリングの契約をする際に注意するべき2つの点は?
ファクタリングは、個人事業主の資金繰りを解決する便利な方法ですが、以下の点に注意する必要があります。
- ファクタリングの契約書をしっかり読んでおく
- 契約書は必ず手元に保管する
1.ファクタリングの契約書をしっかり読んでおく
ファクタリングの「契約書」はしっかり読んでおかなければなりません。なぜなら、契約書には法的な効力が発生するからです。
賠償金やファクタリング契約の解除を求められた際に、「そんなことは聞いていない」といっても、契約書に記載があり、あなたの印鑑やサインがされていれば、その主張は通りません。
契約書に合意する際の注意点は以下の4つです。
- 契約書に書かれている内容と口頭での説明に食い違いがないか?
- 日付が空欄だったり、印鑑が押されていなかったり不備がないか?
- 償還請求権が設定されていないか?
- 担保や保証人が設定されていないか?
日付が空欄だったり、印鑑が押されていない場合、売掛金の支払い日を違う日に変更されても、わかりません。そのため、支払いに遅れたという理由で、法外な手数料を請求される可能性があります。
「償還請求権」が設定されていないかも必ず確認してください。
償還請求権とは、売掛先の業績不振などが理由で、ファクタリング業者が売掛金を回収できない場合にあなたに支払った債権の買い戻しを請求する権利のこと。
ファクタリング契約で償還請求権が設定されるケースはありません。なぜなら、償還請求権の買取ができるのは、「貸金業者としての登録」がある業者のみだから。
万が一、売掛先が売掛金を入金できなくても、あなたが弁済をする必要はありません。契約書にそのような記載があった場合は、悪徳業者である可能性が高いです。
また、「担保」や「保証人」も不要です。その理由は、ファクタリングが融資ではないため、担保や保証人の設定が可能な債務を返済するわけではないから。したがって、担保や保証人を求められた業者とは契約をしないでください。
契約書は必ず手元に保管する
ファクタリング業者と契約を結んだ場合、業者が契約書を、あなたが「契約書の控え」を一部ずつ受け取ります。
契約書の控えは必ず手元に保管することをおすすめします。なぜなら、契約書で合意していないことを請求された場合に、契約書の控えを持っていれば、拒否できるから。
契約書の控えは、なにかあった時にすぐに持っていける場所に保管しましょう。悪徳業者の中には、「今回は仮契約なので、契約書は取り交わしません」と説明する業者もいますが、注意してください。
まとめ
本記事では、ファクタリングの契約手順などについて解説してきました。
3社間ファクタリングの手順は、
- 売掛債権が発生
- 相談・申し込み
- 必要書類の提出
- 債権の審査
- 債権の金額が確定
- 取引先へ債権譲渡の通知や同意を得る
- 契約締結
- 買取代金を振り込み
- 売掛先から直接ファクタリング業者に振り込み
という流れで行います。
「2社間ファクタリング」の場合は、債権の譲渡の通知や合意が必要ないので、入金までの時間が早くなります。
個人事業主にとって、ファクタリングは、資金繰り改善に利用できる方法なので、ぜひ検討してみてはどうでしょうか?