年末調整と確定申告の違いは3つ!両方必要なケースについても解説

会社員が所得控除を受けるために、毎年12月頃に会社で年末調整を行います。そのため、基本的には確定申告は不要になります。

ただ、年末調整に間に合わなかったもの、そもそも年末調整の対象とならないものなど、場合によっては年末調整をしたあとに、確定申告を行う必要があります。

本記事では、年末調整と確定申告の違いについて確認しながら、両方の手続きが必要なケースについてもみていきます。

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監修者
■監修者:社会保険労務士・FP2級 西岡秀康
生命保険会社に25年勤務の後、社会保険労務士事務所を開設。保有資格は社会保険労務士資格、FP2級。社労士として企業の人事・労務のサポートを行うとともに、FPとして資産運用・税金相談を承っています。

年末調整とは

年末調整とは、給与所得に対する所得税を精算するために、1年間の給与所得が確定する12月に、会社が所得税を再計算して差額分を調整することです。

所得税は、毎月一定の金額が給料から源泉徴収されていますが、12月の給料の金額が決まるまでは大まかな金額で計算されています。

そのため、1年間の給与所得が確定し、さらに該当の各種所得控除を差し引いた上で、最終的な納税額を確定させるための作業が年末調整というわけです。

会社員の場合は期日までに書類さえ提出すれば、会社が代わりに手続きを行ってくれますので、本人が確定申告を行う必要はありません。

年末調整の対象者

年末調整は会社員やアルバイトなど、給与所得を受け取っている人全員が対象となります。

雇用形態に関わらず派遣社員などの非正規雇用でも年末調整は行わなければなりません。

ただし、ダブルワークで複数の場所で給料をもらっている場合は、メインで働いている会社で年末調整を行うため、副業の方の会社では年末調整をする必要はありません。

しかし、副業の収入については、金額によって確定申告をする必要があります。そのほかにも、以下の人は年末調整の対象外となりますので、確定申告が必要です。

<年末調整の対象外になる方>

  • 給与所得が2,000万円以上の人
  • 災害減免法に基づいて源泉所得税・復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人 など

参考:年末調整の対象になる人|国税庁

年末調整の期間

年末調整の期間は具体的に決められていませんが、多くの会社では手続きを12月末までに行います。そのため、必要書類の記入および提出を、11月末頃までに締め切る会社が一般的です。

期間内に書類を提出できなければ、受けられるはずだった控除が受けられずに、払いすぎた税金が還付されない可能性があるので気を付けてください。

年末調整のやり方

年末調整のやり方はシンプルで、扶養控除や保険料控除等に関する書類を会社へ提出すれば、それで手続きは終了です。

具体的に会社に提出が必要な書類は下記のものとなっています。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 給与所得者の配偶者控除等申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書

生命保険料控除や住宅ローン控除を受ける場合は、申告書の記入が必要となりますので、どのような支払いが控除の対象になるか事前によく確認しておきましょう。ただし、住宅ローン控除については、1年目は確定申告をする必要があるため注意が必要です。

参考:年末調整がよくわかるページ|国税庁

確定申告とは

確定申告とは、1年間の自分の所得額と控除額を申告し、正しい所得税額を算出して納付または還付を受ける手続きのことをいいます。

確定申告を行う必要のある人が期限内に行わなかった場合、ペナルティとして追加で税金を徴収されてしまうので注意してください。

確定申告の対象となる人は、必ず期間内に確定申告を行うようにしましょう。

確定申告の対象者

確定申告は、個人事業主やフリーランスはもちろん、年末調整を行った会社員でも、以下のいずれかに該当する人は行う必要があります。

  • 給与所得以外の所得が20万円を超える人
  • 複数の会社から給与や賞与を受け取っている人
  • 給与所得が2,000万円を超える人
  • 給与所得のほかに家賃収入など不動産所得がある人
  • 災害減免法の規定によって源泉徴収の猶予または還付を受けた人
  • 源泉徴収が適用されない給与または賞与の支払いを受けている人
  • 公的年金などにかかわる雑所得の金額から所得税を引くと残額がある人
  • 退職所得がある人

このほかにも、年の途中で退職した人やFXや株などで利益を得た人も確定申告が必要です。

参考:確定申告が必要な方|国税庁 / 確定申告|楽天証券

確定申告の期間

確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日と決まっていますが、最終日が土日祝日の場合は休日明けの平日までとなっています。

2021年は新型コロナウイルスの感染拡大により、確定申告の期間が1ヶ月延長されます。このように様々な社会情勢に応じて、確定申告の期間が延長する可能性はあります。

しかし、基本的には先ほど挙げた期間となりますので、期日内に手続きができるよう日頃から準備をしておきましょう。

詳しい情報は国税庁のホームページで確認できますので、事前に確認しておきましょう。

参考:令和2年分確定申告特集

確定申告のやり方

確定申告の手続きは税務署へ直接書類を提出する以外にも、郵送やオンラインでも手続きをすることが可能です。

特にオンラインでの提出であれば、書類の記入もスマートフォン上で行えるので、税務署に行く時間がないという人におすすめです。

ただし、オンライン上で確定申告を行うためには、e-taxというサイトを利用する必要があり、マイナンバーカードが必要となるので、マイナンバーカードの申請をしていない人は2月までに用意しておきましょう。

また、申請を行うためには下記の書類を用意する必要があります。

  • 確定申告書A(給与所得者)または確定申告書B(自営業者やフリーランス)
  • 各種控除関係の書類
  • 収支内訳書(白色申告)
  • 青色申告決算書(青色申告)
  • 支払調書(青色申告)

白色申告をするか青色申告をするかによって必要書類が違うため、事前によく確認しておきましょう。ただし、青色申告をするためには事前に届け出が必要となります。

参考:個人事業主の方の確定申告|国税庁 / 所得税の確定申告|国税庁

年末調整と確定申告の違い

年末調整も確定申告も、受け取った給料(所得)に対する税金(所得税や住民税)を正しく納めるために必要となる手続きです。

しかし、年末調整だけで終わる人もいれば、確定申告もしなければならない人もいるなど人によって必要な手続きは異なります。

そこで、まずは年末調整と確定申告の違いを確認していきましょう。

違い1.手続きの対象となる所得が違う

年末調整と確定申告の違いとしてまず挙げられるのが、手続きの対象となる所得の種類の違いです。

年末調整の対象となる所得は「給与所得」のみで、1年間の給与所得が確定する12月に正しい税額を算出し、最終的な納税額を確定させる手続きをします。

そのため、年末調整は会社員やパート、アルバイトなど給与所得がある人のみで、個人事業主やフリーランスなどは年末調整はしません。

一方の確定申告では、給与所得だけでなく、すべての(種類の)所得が対象となります。以下に給与所得以外の所得について、簡単にまとめました。

  • 不動産所得
  • 事業所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 雑所得
  • 退職所得
  • 配当所得
  • その他

参考: 所得の種類と課税方法|国税庁 

年末調整をしない個人事業主や、フリーランスとして事業所得がある人、会社員でも家賃収入などの不動産収入がある人、また懸賞に応募して懸賞金が当たったといった人も確定申告を行い、正しい所得税額を算出することになります。

このように、給与所得を一つの企業からのみ受け取っている人は年末調整だけで済みます。しかし、複数の給与所得があったり、給与所得以外の収入があったりする人は、年末調整のあと、追加で確定申告も行う必要があるわけです。

違い2.所得控除できる控除の種類が違う

所得税は収入(所得)の全額に対して課税されるものではありません。一定の金額が「控除」され、残った部分に対して課税される仕組みとなっています。

この所得から差し引かれるものを「所得控除」といいますが、年末調整と確定申告では、所得控除できるものが異なります。それぞれの手続きでできる所得控除を以下にまとめました。

▼年末調整と確定申告による所得控除

 年末調整確定申告
医療費控除×
雑損控除×
寄附金控除×
社会保険料控除
生命保険料控除
地震保険料控除
配偶者控除
配偶者特別控除
扶養控除
基礎控除
寡婦(寡夫)控除
小規模企業共済等掛金控除

年末調整では1年間に支払った生命保険料や地震保険料、また配偶者控除や扶養控除など家族に対する控除がありますが、1年間にかかった医療費や寄附金などについては処理できません。

そのため、医療費控除や寄附金控除などを受けたい場合は、確定申告を行う必要があります。

参考:年末調整が良く分かるページ|国税庁 / 年末調整チェック表|国税庁

違い3.手続きをする人が違う

年末調整と確定申告は、会社が代理で処理をするか、あるいは本人が行うかの違いがあります。年末調整の場合は、会社へ必要書類を提出さえすれば、あとは会社が代理で手続きを行ってくれます。

しかし、確定申告は自分で書類を作成して、期限内に申告手続きを行わなければならず、さらには納める税金の計算まで行う必要があります。

年末調整の対象にならない5つの控除

先にも紹介した通り、年末調整では収入から各種の所得控除が差し引かれますが、次の控除については確定申告でのみ手続きを行うことができます。

ここでは、確定申告で手続きを行う5つの控除について順番に確認していきましょう。

1.医療費控除

医療費控除とは、自分や扶養に入っている家族の医療費の合計が10万円を超えた場合に、所得控除してもらえる制度です。

医療費控除の対象となる費用は、病院の診察や入院、手術にかかる金額のほかに、薬代や病院への交通費も含まれます。

控除額は、下記の式で計算されます。(最高で200万円)

(実際に支払った医療費の合計額)-(保険金などで補填される金額)-(10万円※注1)

※注1 その年の総所得金額等が200万未満の人は総所得金額等の5%

その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が対象になりますので、確定申告の期日までに1年間の医療費を計算しておく必要があります。

参考:医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁

2.寄附金控除(ふるさと納税含む)

国や地方公共団体、特定の法人などへ寄附を行っている場合は、寄附金控除の対象となり、所得控除を受けることができます。

こちらも年末調整では控除できませんので、確定申告をする必要があります。

また、ふるさと納税を行っている人も寄附と同じ扱いになるため、寄附金控除の対象となります。

参考:寄附金を支出したとき|国税庁 / ふるさと納税|国税庁

3.初年度の住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、一定の条件で住宅ローンを組んだ人や、省エネ・バリアフリーなど改修工事をした人が対象になり、年末のローン残高に応じて控除が受けられる制度です。

住宅ローンの契約をしてから、10年目まではローンの残高に応じた控除が受けられます。

2年目以降の住宅ローン控除は、給与所得のみの会社員であれば年末調整で受けることができますが、初年度だけは確定申告をしなければ控除されません。

住宅ローンを利用して新築や購入、リフォームを行った人は、忘れずに確定申告しましょう。

参考:4「住宅ローン控除」って?|フラット357来年以降は?また確定申告するの?|フラット35 

4.雑損控除

雑損控除とは、自然災害や盗難などの被害にあった場合に、被害額に応じた一定の金額を所得控除してもらえる制度です。

例えば、日常生活している住宅や家具に損害がでたり、災害の影響で住宅の撤去を行ったりした費用が雑損控除の対象となります。

ただし、別荘など日常生活に使用していない住宅や、30万円を超える高級品は控除の対象にはならないので注意が必要です。

参考:災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)|国税庁

5.特定支出控除

特定支出控除とは、業務にかかわる支払いが経費としておりず自己負担をした場合、特定支出として控除が受けられるものです。

対象になるのは下記の支出のうち一定の要件を満たすものです。

  1. 通勤費
  2. 転居費
  3. 研修費
  4. 資格取得費
  5. 帰宅旅費
  6. 勤務必要経費

ただし、特定支出控除を受けるためには、事前に特定支出に関する証明書を会社に発行してもらう必要がありますので、確定申告前に忘れずに発行してもらいましょう。

参考:給与所得者の特定支出控除について|国税

年末調整の対象にならない5つの控除以外で確定申告が必要なケース

会社員やアルバイトなどの給与所得者の中には、先ほど紹介した控除の対象にならない人でも、確定申告が必要な人もいます。

必要な確定申告を怠ると脱税になる可能性もあるので、しっかりと確認しましょう。

ケース1.年末調整で控除可能なものを忘れていた

年末調整で控除の申請を忘れていた場合、確定申告を行う必要があります。確定申告を忘れると、当然、控除はされません。

期日に遅れてしまったときは、会社に書類を提出したとしてもあとから控除の申請はしてもらえないので、自分で確定申告を行い控除してもらいましょう。

ただし、控除可能なものを申請しなかったとしても、還付が受けられないだけで脱税にはならないので、ペナルティを受けることはありません。

ケース2.年間の給与収入が2,000万円を超える

年間の給与収入が2,000万円を超える場合は、年末調整ではなく確定申告を行う必要があります。

会社では年末調整の手続きをすることができないため、忘れずに確定申告をするようにしましょう。

参考:給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁 / 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか|国税庁 / 合計所得3000万円の判定|国税庁

ケース3.副業で2カ所から給与をもらっている

副業で2カ所から給与をもらっている場合、確定申告を行わなければなりません。

複数の勤務先から給与をもらっている人でも、年末調整を行うのはメインとなる会社のみであるため、副業の収入は自分で納税する必要があります。

しかし、副業での収入が20万円を超えない場合は確定申告をする必要はありません。

参考:給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

退職者は確定申告で還付を受けられる?

会社を退職して年末まで新しい会社に就職していない場合、年末調整を受けられないため、確定申告をすることで還付金が受け取れる可能性があります。

毎月の所得税の天引きは予想に基づいて徴収されていますので、納付しすぎている可能性があるのです。

申告内容が還付のみならばは、退職した年の翌年以降5年以内であれば申告可能ですが、早めに手続きをしておくことをおすすめします。

年末調整と確定申告の違いを理解しよう

年末調整は自分の所得税の計算を会社が行ってもらえるため、必要な書類を提出すれば会社が作業を代わりに行ってくれます。

そのため、勤め先以外に収入がない会社員の多くは、確定申告を行ったことがない、意識したことがないという人も多いでしょう。

しかし、副収入がある人は金額によって確定申告が必要ですし、副収入がない人でも確定申告をすることで節税につながるケースもあります。

また、年末調整では手続きができない所得控除もありますので、対象となる費用がないか確認しておくとよいでしょう。